オフサイド・トリップBACK NUMBER
リトバルスキーが語る香川再生論。
「私から見れば、彼は100%右利きだ」
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byAFLO
posted2017/03/03 07:00
香川真司の繊細なプレースタイルは、今季のドルトムントでは輝きを失っている。香川はどんなキャリアパスを選択するのだろうか。
パスを受けた時の反応でわかる不調の原因。
――香川は生真面目ですからね。エリック・カントナのようにはなれない。
「さらに深刻なのは、香川自身が単純に調子を落としてしまっている点だ。
今の彼はサッカー選手としてステップアップしていくというよりも、以前と同じようなプレーが今でもできるのだと、証明することが求められている。
だが実際にはそれもままならないし、トップレベルのパフォーマンスを発揮する場面は極めて少ない。誤解してほしくないのだが、私は香川にポテンシャルがないといっているわけではない。彼が高い才能を持っていることは折り紙付きだし、かつてドルトムントにいた頃は、まさに見事なプレーを発揮していた。私自身、香川真司という選手の大ファンだった。
ただし少なくとも現状はそうではない。しかも出場機会を与えられないため、復調の糸口さえつかめない。正直、ドルトムントでこのままやっていくのはかなり難しいと言わざるを得ない」
――監督との信頼関係はともかく、技術的に見た場合、そこまで調子を落としてしまった原因はどこにあるのでしょうか?
「理由は明らかだ。香川はまだ若いし、体力の低下が原因にはなり得ない。大きな怪我をしているわけでもないのだから、こういうプレーすればいいというイメージを、完全に見失っていることが最大の原因だという結論になる。
それはパスを受けた時の反応からもわかる。
ボールを持った場合、選手が取り得るオプションは3つしかない。前に運ぶか、後ろに戻すか、横にさばくかだ。セレッソ時代や、かつてドルトムントにいた頃の香川は、ファーストタッチで必ず前を向き、相手にとって危険なプレーを仕掛けてきた。
しかし今はどうだろう。ファーストタッチでは、バックパスかサイドパスを選ぶことが多い。日本代表の試合でもしかり。香川は明らかに自信をなくしているし、プレーの方向性自体を把握しかねている」
――現状を打破するために、プレースタイルを変えるというオプションは?
「一般の人たちは、香川ほどの選手であれば、自分で考えてプレースタイルを変えていけるのではないかと思うかもしれない。
だがプレースタイルを変えるというのは、どんな選手にとっても相当の勇気が求められる。さらに言うなら、どこをどう変えていけばいいかを判断するためにこそ『ベース』、つまり基本となるプレーのイメージが必要になる。しかし今の香川は、そのベース自体を見失っている。こういう状況は本当に厄介だ」