Sports Graphic Number MoreBACK NUMBER
「リハビリ中、たくさん泣いたんだ」
内田篤人が明かす苦闘の1年9カ月。
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph byItaru Chiba
posted2017/02/10 08:00
12月8日、ELザルツブルク戦の後半から途中出場。639日ぶりにピッチを駆け回った。リハビリが続く右脚は黒い特殊なタイツで覆われている。
日本でやったリハビリが、一番手応えがあった。
事態が好転した理由はもう一つある、と遠藤は見る。
「(小笠原)満男さんとかソガさん(曽ヶ端準)とか俺とか、周りに知ってる人がいるっていうのも良かったのかも」
心の底から安心できる環境に戻り、内田はやっと一歩を踏み出せた。手術からは約1年が経っていた。
7月、ドイツに戻った内田はシャルケでのリハビリを再開させる。当初、シャルケの方針に従ったが、前進がみられなかったため、以前からドイツで個人契約を結んでいたトレーナーの吉崎正嗣氏に相談した。吉崎氏が述懐する。
「日本で最後にやったリハビリが一番手応えがあったからそれをドイツでもやりたいんだけど、ってウッチーが自分で言ってきたんですよ」
内田はシャルケのトレーナーにも変化を求めた。
内田は当然、同業ならではの意地やプライドもあるだろうことは分かっていた。その上で、「鹿島でのやり方を」と吉崎氏に相談したわけだ。吉崎氏は塙氏に連絡を取り、情報や方針を共有しながら、自らが行うケアとトレーニングに落とし込んでいった。内田はこう感謝を示す。
「気持ち的には難しいだろうに、連絡を取り合ってやってくれたんだよね」
さらに内田は、シャルケのトレーナーにも変化を求めたと吉崎氏は明かす。
「ウッチーが自分でこのやり方がいい、これは違う、というのをチームのトレーナーたちに伝えていったんですよ。何度も根気強く、時にはケンカしながらもリハビリを進めていったんです」
自らの能動的な姿勢が周囲を動かし、回復を早めたのだ。