eスポーツは黒船となるかBACK NUMBER
何度目かの「eスポーツ元年」到来。
日本一を決める大会で感じた前進。
text by

八木葱Negi Yagi
photograph byNegi Yagi
posted2017/02/03 17:00

演出も派手だが、それ以上に選手たちの表情が印象に残る。「見せる」という意識において、すでに多くの競技を上回っている。
1チームは基本的に8人構成。競技間の溝は?
さて、件の決勝戦の舞台に話を戻そう。
3つのタイトルに1人の選手が習熟することは難しいので、必然的にチームはそれぞれのタイトルに精通したプレーヤーを揃える必要がある。『FIFA17』と『BLAZBLUE』はそれぞれ1人ずつだが、『OVERWATCH』は6人対6人の競技なので、1チームは基本的に8人構成。
他競技をどのくらい真剣に応援できるのだろうと邪推していたのだが、会場で選手たちを目撃して疑問は消えた。想像以上にチームメイトの勝利を願い、敗北に悔しがっているのだ。
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この日は1種目めの『FIFA17』、2種目めの『BLAZBLUE』をともにサイクロプス大阪が取ったため、『OVERWATCH』を待たずに優勝は決まったのだが、それでも3種目めまで声援が飛んでいた。
ゲームではあっても、マインドは完全にアスリート。
しかし、中でも印象的だったのは、彼らのアスリートとしての「本能」とも言うべき性分。優勝を決めた直後のチーム控え室へお邪魔したのだが、3種目めを落としたメンバーはひどく気落ちし、最初の2種目で勝利した2人の選手も彼らの状況を見てとって刺激しないようにしていたことだ。
負けた時にどんな反応をするか、というのは何かを極めようとする人間の本質が出るタイミングだが、自らを責める姿、それを理解して気遣う姿は彼らの真剣度を表しているように見えた。eスポーツは「遊びとしてのゲーム」の延長上にはもちろんあるのだが、草野球とプロ野球が違うように、プロ契約という形でゲームに取り組む彼らのマインドは、完全にアスリートのそれなのだ。
特に『OVERWATCH』選手たちの、チームメンバーを時に鼓舞し、時に戦術を論議しながらPCモニターに向かう姿は誇張なくかっこよかった。