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「あと2回しかチャンス、ないねんぞ」高校生クイズのために転校した天才双子を襲った“まさかのルール変更”「知識問題ゼロ」「対策のしようがない」
posted2025/09/09 11:01
2018年の『高校生クイズ』で優勝し、現在はQuizKnockに所属する東問と東言
text by

別府響Hibiki Beppu
photograph by
Nanae Suzuki
多くのドラマを紡いできた高校生クイズ。43年の歴史の中でも異色のコンセプトとなった2018年大会は「双子の天才プレーヤー」を世に放つことになった。伊沢拓司らに憧れ、競技クイズに人生を懸けた兄弟が歩んだ、波乱万丈の旅路とは?《NumberWebノンフィクション全4回の2回目/第3回、第4回に続く》
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「あと2回しかチャンス、ないねんぞ」
「これ、終わったやろ――」
2018年の『高校生クイズ』のホームページに表示された「地頭力」という言葉を見て、当時、高校2年生だった東問・言の双子は、文字通り頭を抱えてしまった。
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小学校のころから、伊沢拓司や田村正資らが活躍した“知力の甲子園”時代の『高校生クイズ』に憧れてきた。中学時代は、なんとか番組がそのコンセプトに戻らないかを期待しながら、鹿児島の名門・ラ・サール中高で競技クイズの力を磨いてきた。
そして、紆余曲折を経てクイズのために、九州から遠く三重県の桜丘高校に転校までしたのだ。そこでようやく双子がそろった。今年こそは少年時代からの夢である全国のトップを獲りに行く――そう考えた矢先の「地頭力」である。
「あと2回しかチャンス、ないねんぞと。『地頭力』ってなんだと。もう、ライフが1つ減ったような気持ちで」(問)
2人がそう考えたのは、この年のテーマがあまりに“競技性”が低く思えたからだ。
例えば、提示された例題は「プールいっぱいの風船をどうやったら早く割れるか」という問いで、それを芸能人たちが解いていた。知識量や早押しの技術が問われる競技クイズの要素は限りなく薄く、その場で解法を思いつくか否か――まさに“地頭”の力が問われるということだ。
つまり、対策のしようがない。というよりも、対策をすることそのものを作り手側が忌避してきたのだ。それはすなわち、「狙って勝ちに行く」ということが限りなく難しいことを意味していた。
「それまではなんだかんだで各地の競技クイズの強豪校が対策をして、勝つ確率を上げて、勝ち残っていっていた。でも、この年は『地区予選で女性アイドルのライブもやるんで、会いたい人は来てね!』みたいなところも前面に押し出していて、参加者の間口を広くしようとしているのかなとも思いました」(言)

