猛牛のささやきBACK NUMBER
「糸井さんの穴は自分が埋めます」
オリ・武田健吾が突然のビッグマウス!
posted2017/01/31 11:30
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
NIKKAN SPORTS
「糸井さんが抜けたので、その穴は自分が絶対埋めて、糸井さんよりも打ってやろうという気持ちが強いです」
昨年12月の契約更改後の記者会見。プロ4年間で通算6安打の22歳、武田健吾の口から飛び出した言葉に、会見場は無言の驚きに包まれた。
決してビッグマウスな選手ではない。声をかけるといつもニコニコと愛嬌のある笑顔で応じ、謙虚に質問に答えてくれる人のいい選手だ。そんな武田の言葉だからなおさら驚いた。
阪神にFA移籍した糸井嘉男が抜けた外野の新布陣候補としては、一塁手も兼ねる選手会長のT-岡田や、昨年、ルーキーながら終盤に本塁打を量産した吉田正尚、守備力の高い駿太をはじめ、小田裕也、大城滉二といった昨年ある程度実績を残した選手の名前が挙がるが、武田はそこに自ら名乗りをあげた。
年が明けてから、武田にあの発言について聞いた。
「今年は5年目で、勝負の年。たくさん打たなきゃいけないと思ってるし、ちょっと、言っちゃおうかなって。とっさに出ましたね」と照れくさそうに笑った。
「とっさに」出たのは、これまでになかった自信が芽生えていたからだ。
4度一軍登録され、ほとんどは数日で降格。
福岡県の自由ヶ丘高校から2012年のドラフト4位で入団した武田は、ルーキーイヤーの2013年終盤に一軍デビューを果たし、プロ初ヒットを記録した。しかしなかなか一軍定着はできない。4年目だった昨年は4度、一軍登録されたが、数日で降格となることがほとんどだった。
もともと自信を持っていた守備では、フェンス際で好捕を見せたり、センターからの好返球で得点を阻止するなどチームを救う活躍を見せた。しかし打てなかった。20打数2安打、打率.100に終わった。
「『結果を出さなきゃ』、『打ちたい打ちたい』と力が入ってしまって、バットが出なかったり、ボール球を振ったり……。自分が思っているバッティングが全然できなくて、めちゃくちゃ悔しかったです、本当に」