炎の一筆入魂BACK NUMBER
優勝翌日にデビュー、防御率162点。
広島・塹江敦哉は3年目に絶対来る。
posted2017/01/31 08:00
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
Kyodo News
「今年“神ってる”活躍してくれる選手を取り上げてください」
1月。キャンプ地・日南での合同自主トレを公開した広島の守護神中崎翔太が指さした先にいたのは、今年3年目の左腕、塹江敦哉(ほりえ・あつや)だった。
確かに、まだ肌寒い時期でも、平地で力強い球を投げ込んでいた。緒方孝市監督や畝龍実(うね・たつみ)投手コーチからも名前を挙げられた逸材。鈴木誠也という新星が生まれた広島で今年、台頭が期待される。
高卒2年目の昨年、塹江は一軍に昇格した。一軍に同行していた優勝の瞬間は胴上げにも参加した。ただ、宿舎でのビールかけには19歳ということで、会場にも入ることはできなかった。「これほど早生まれを恨んだことはない」と5カ月遅い誕生日に苦笑い。それでも一岡竜司ら先輩たちが部屋のバスタブでビールではなく、炭酸水をかけて祝ってくれた。喜びと感謝を感じながら「来年は自分の力で優勝に貢献し、ビールかけに参加したい」と気持ちを新たにした。
デビュー戦は1アウトで6失点、防御率162.00。
デビュー登板は優勝が決まった翌日、9月11日巨人戦。7回に登板した。しかし、先頭長野久義への初球をレフトスタンドに運ばれると、安打の後に連続四球。1死後、満塁から連続長短打を浴びて、マウンドから降りた。0回1/3で6失点。防御率162.00が記録された。
「結果、力の入った投球になってしまった。二軍でファウルになる球が1発になることを感じた」
緒方監督は肩を落とす左腕に「1アウト取れたじゃないか。次は2アウト取れればいい」と背中をたたき励ました。
遡ると、100勝100セーブの広島OB大野豊も、防御率135.00でのデビューだった。大きな期待を背負っているからこそ与えられた初登板。塹江が39年前の大投手と違ったのは、リベンジのマウンドが用意されていたこと。デビューから中4日で中継ぎ登板し、1回を無安打無失点に抑えると、中2日で先発のチャンスにも恵まれた。