猛牛のささやきBACK NUMBER
「糸井さんの穴は自分が埋めます」
オリ・武田健吾が突然のビッグマウス!
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2017/01/31 11:30
甲子園に出場しなかった高校生の野手がドラフト4位で指名されるのは、大きな期待の表れである。その期待に、今年こそ応えるタイミングなのだ。
U-23W杯の代表に選ばれ、.455と大暴れ。
苦しむ武田をよそに、新人の吉田正や大城が打撃を評価され、年下の奥浪鏡や園部聡も一軍デビューを果たし安打を放った。
「焦りはめちゃくちゃありました。結果を残さなきゃ、すぐに切られる世界なので」
シーズン後のフェニックス・リーグでも、先発出場の機会は減っていた。自分に残された時間は多くない、来年こそ絶対に結果を残さなければ後がないと悟った。そんな頃、武田はメキシコで開催されたU-23ワールドカップの日本代表に選抜された。
この大会で武田は、シーズン中、悩んでいたことが嘘のように打ちまくった。1番センターに固定され、打率.455をマークした。
打撃開眼のきっかけは、タイミングの取り方を変えたことだという。以前は投手に合わせて、「あ、来た!」と慌ただしく始動していたが、自分から先に始動することにした。
「まずは左足を上げて、その状態でゆっくりタイミングを取って、あとはピッチャーに合わせてバットを出すだけ。ゆっくりボールを引きつけるイメージです。日本では速いまっすぐを弾き返せなくてファールになり、自分がどんどん不利になっていったので、一発で仕留められるように意識しました。日本にいる時と同じことをやるんじゃなくて、何かを変えなきゃ、ずっとこのままいってしまうと思ったから」
「いろいろ考えてバッティングを崩さないように」
メキシコでは初対戦の投手ばかりだったが、イニング間の投球練習を見ながら、「このピッチャーはこのタイミングでバットを出そう」とタイミングをはかっていたという。
「知らないピッチャーばかりで、球が動く投手も多かったんですけど、タイミングをゆっくり取って、自分の間で打てていたから結果が出たのかなと思います」
台湾戦で満塁弾を放つなど日本の優勝に貢献し、ベストナインに選ばれた。その経験が、武田に足りなかった“自信”を与えてくれた。
「このまま頑張れば大丈夫だって、自分に言い聞かせてやっていきたい。僕はちょっとでも『違うな』と感じたら、いろいろ考えてしまって、自分でバッティングを崩していってしまうので、もう今年は何も考えずガムシャラに、我が道を行こうと思います。それでダメだったら、もうそれは自分の実力がなかったということだから」と覚悟を語る。