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一頭だけ筋肉が全く違ったモーリス。
天皇賞・秋でマイルと「2階級制覇」。

posted2016/10/31 11:40

 
一頭だけ筋肉が全く違ったモーリス。天皇賞・秋でマイルと「2階級制覇」。<Number Web> photograph by Yuji Takahashi

今年の凱旋門賞を取り、現世界最強騎手の呼び声も高いライアン・ムーア。狭いところを抜けていく技術は天下一品だ。

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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Yuji Takahashi

 秋の中距離王を決める第154回天皇賞・秋(10月30日、東京芝2000m、3歳以上GI)を1番人気のモーリス(牡5歳、父スクリーンヒーロー、美浦・堀宣行厩舎)が制し、マイルのGI4勝につづく「2階級制覇」をやってのけた。

 圧巻の勝ちっぷりだった。

 名手ライアン・ムーアを背にしたモーリスは、1000m通過1分0秒8という落ち着いた流れのなか、中団の外目で折り合い、直線へ。馬場の真ん中を力強く伸び、ラスト200m地点で先頭に立ち、2着を1馬身半突き放した。勝ちタイムは1分59秒3。

「陣営が最高の状態に仕上げてくれた。今までにない走りを見せることができました。ペースが早くなかったので、前から離されずにレースを進めました。早めに仕掛けても、誰にも追いつかれない自信がありました」

「アイスマン」と呼ばれるムーアが、珍しく多弁だった。

前に馬がいる状態を納得させるトレーニング。

 モーリスにとって、2000mでの初勝利が、伝統あるGI制覇となった。急に距離をこなせるようになったわけではもちろんなく、この圧勝劇の背景には堀調教師をはじめとする陣営の継続的な努力があった。

 マイルより長い距離をこなすには、掛からないようにしなければならない。問題は、この馬の燃えすぎる気性面だった。

「レースの流れのなかで緩急がついたりすると、力のある馬なので、そのまま行ってしまう恐れがあった。だから、これまではワンターンの1600mがよかったんです」と堀師。

 緩急の変化などに対応できるよう、さまざまな工夫をこらしてきた。

「例えば、併せ馬で、4分の3馬身差をキープしてついて行き、その状態を馬に納得させるようにしました。また、普段人が乗っていないときでも、人の言うことをきくことができるよう、犬のしつけなどと同じように留意しています」

【次ページ】 一頭だけヘラクレスのようなムキムキ体型。

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