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大谷翔平を日本シリーズから「消せ」。
初戦の先発に黒田博樹を推す理由。 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2016/10/21 11:35

大谷翔平を日本シリーズから「消せ」。初戦の先発に黒田博樹を推す理由。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

時速165キロの豪速球はバッターにとって、もはや異次元の世界。ちなみに世界最速記録は、MLB公認記録で169キロ(アロルディス・チャップマン)である。

黒田引退の発表で、日本Sでの流れを逆に引き寄せた。

 シリーズ直前の引退表明に賛否はあるかもしれない。本人が発表を躊躇した理由もそこにあった。ただ、逆にシリーズを睨んだとしても大谷一色になりそうなムードを、これで広島に引き寄せたことは大きかった。

 しかも、これで初戦に黒田が投げれば、マツダスタジアムはより熱狂的に盛り上がる。

 戦術的にも、黒田なら改めて日本ハム打線の実戦データを収集したり、ツーシームを使って2戦目以降に残像を残すような内角中心の配球など、ベテランならではのピッチングが期待できる。チームにプラスを引き出せるし、それだけの力があるはずなのだ。

大谷の先発試合で負けることが前提ではない。

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 かつて黄金時代の西武がシリーズ開幕戦に、あえて当時のエースだった渡辺久信らを起用せず、コントロールがよくシュートが武器だったベテランの東尾修を投げさせた。それと同じ発想だ。

 要は3つ負けられるなら、初戦はあえて勝ち負けにこだわらずにシリーズトータルを見据えた試合をする。それができる投手を開幕戦に指名するということである。

 もちろん黒田vs.大谷で勝てば、それこそ広島が圧倒的に優位になる。もし敗れても次にはジョンソンがいる。そして2勝3敗で広島に戻ってくるケースでも、今度こそ大谷にジョンソンをぶつけて勝負ができるし、逆に王手をかけて戻ってきてもジョンソンがいて、最終戦にも野村がいる。そうなれば黒田のリリーフ待機もできるという配置だ。

 もちろん大谷の先発試合で負けることが前提ではない。

 ただ、負けても計算の上で4つ勝つというシミュレーションがしっかりできていれば、この敗北は単なる1つの負けに過ぎなくなる。

「大谷くんで負けるのは覚悟の上。むしろきょうは色々なことができて、今後のシリーズに向けて収穫の多い試合だった」

 敗れても緒方監督がこう語れれば、チームとしてシリーズを戦っていく上でのダメージはほとんどないはずなのである。

 もし負けたときに、やられた感が出てしまえば大谷は打席でも乗る。そして大谷が乗ればチームも乗ってしまう。

【次ページ】 大谷の打席にストライクはいらない。勝負はしない。

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