サッカーの尻尾BACK NUMBER
拍手から呆然へ変わったペップの姿。
メッシ&エンリケのバルサにCL惨敗。
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byAFLO
posted2016/10/20 11:25
バルセロナに4点を奪われ、最後は「お手上げ」状態だったグアルディオラ。次なる戦術革命を起こすことはできるのか。
エンリケ「フットボールはミスを突くゲーム」
しかし、想定外の事態がグアルディオラのプランを狂わせた。
「クラウディオ(ブラボ)の退場で試合は変わってしまった。あの時点までは、チャンスは作っていた。鍵となったのは、フェルナンジーニョが滑ったこと、そしてあの退場だ」
失点に加え、1人少ない状況での戦いを残り約40分間も強いられた。相手はバルサ。この時点で状況は極めて厳しくなった。
グアルディオラの数メートル横に、手応えを感じているルイス・エンリケの顔があった。笑顔を見せることは稀だ。しかし満足感は表情に表れる。
ルイス・エンリケは、かつてペップのバイエルンとCLで対戦した際も、この日と同じスタンスで挑み勝利している。ボール奪取後にすぐに前の3人へ渡して攻める――。相手はバイエルンからシティに変わったが、またしてもバルサの効率性は際立っていた。
メッシが決めた1、2点目はどちらも中盤でのボール奪取から生まれた。1点目はマスチェラーノの競り合いのこぼれ球。2点目はブスケッツのセンス溢れるパスカットからだ。3点目はギュンドガンのバックパスをスアレスが拾い、ゴール前のメッシにお膳立てした。
どれも相手を崩し切ったというよりも、わずかな隙をつき、ボールを手にしてから数秒で決めたもの。相手をどこまでも崩し切ろうとする、かつてのバルサの姿はどこにもない。指揮官にとっては、むしろそれでいい。試合後、ルイス・エンリケはこんなことを話していた。
「フットボールは相手のミスを突きあうゲーム。効率的にならなければならない。今日の試合のように、ともに高い位置からプレスをかける展開になれば、どこかでミスは生まれるもの。バルサやシティのようなチームならなおさらだ」
拮抗した展開では、得点は相手のミスから生まれる。そこを手数をかけずに突く。ルイス・エンリケの信念は実った。
「ペップチーム」を懐かしむ声は年々減っている。
フェルナンジーニョが滑り、ブラボはエリア外で手を使用した。ギュンドガンのバックパスは見事にスアレスに渡った。そんな状況をバルサはうまく生かした。
グアルディオラのプランを、バルサの効率性が打ち砕いた。
この日カンプノウに、グアルディオラを讃える声は響かなかった。それは彼が去ってからの月日を表してもいる。後半終了間際に聞こえたのは、ルイス・エンリケの名を叫ぶバルセロニスタの声だ。
「ペップチーム」を懐かしむ声は年々減っている。カンプノウに響くのはルイス・エンリケが築いた新たなバルサへの喝采だ。