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ボールを持ったら大迫勇也を探せ。
「2トップなら絶対負けない」FWに。 

text by

寺野典子

寺野典子Noriko Terano

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photograph byAFLO

posted2016/10/03 18:00

ボールを持ったら大迫勇也を探せ。「2トップなら絶対負けない」FWに。<Number Web> photograph by AFLO

ポストプレーと得点力を兼ね備える万能性はそのままに、大迫勇也のスケールは着実に大きくなっている。

当初、大迫のドイツ移籍は代表を意識してのものだった。

 日本代表に入り、W杯に出場し、そこでプレーしたい。

 そういう決意のもと、大迫は2014年1月ドイツへやってきた。W杯のピッチには立ったが納得のいく大会とはならなかった。それでも大会後にケルンに移籍し、2部から1部へとステップアップを果たし、さらに上へと願ったものの、ハリルホジッチ監督のメンバーリストにはもう1年以上大迫の名前はない。

「代表ウィークの間もたくさん練習して、たくさん試合をやって、いろんなことがプラスになっている。今はケルンのことしか考えていない。本当に今はリーグに集中できているから、楽しいです。やっぱりチームで充実しないと。

 クラブでのプレーが一番だなとつくづく思うんです。代表はそのご褒美みたいなもの。毎試合レベルの高い相手と戦える今の環境が自分を成長させてくれると思うし、それが一番いいことだと思うから。代表のことはまったく考えていないんですよ」

 時折笑顔を交えながら、充実した日々について話した。

「FWなんだから、ゴールに対する勢いを出さなくちゃ」

 代表招集を知らせる協会からのレターが届くのは、試合の2週間前。つまり欧州でプレーする選手の多くは、メンバー発表を待たずとも結果はすでに知らされている。代表落ちを試練と考えたこともあったに違いない。けれど、代表との距離が生まれたことが、結果的に大迫にとってはチャンスになった。レターが届かなくなったら、もう向き合うのはクラブでの競争だけだ。だから、どんなに厳しい状況に立たされても逃げる場所はない。大迫はケルンでの毎日を必死で戦ってきた。

「絶対にやれる」と自分を信じ、FWとして生きるためのチャンスを待った。

 そんな大迫の姿をケルンのシュテーガー監督はずっと見てきた。そして、大迫に賭けた。2トップにシステムを変更した本当の理由はわからないが、大迫が生きるポジションがピッチの中に生まれたのは事実だ。

「FWなんだから、もっとゴールに対する勢いや相手に対しての怖さを出していかなくちゃいけない」

 ケルンで掴んだチャンスを飛躍のきっかけに変える。そんな強い決意が大迫から感じられた。試練を乗り終えた自信が彼を輝かせている。

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大迫勇也
ケルン

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