セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
インテル、ユーベ撃破もまだ不安定。
デブール新監督は長友をどう使う?
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2016/09/23 08:00
現役時代ロングフィードの名手として鳴らしたデブール新監督を納得させるパフォーマンスを。長友は単なる“まとめ役”で終わるつもりはない。
「イタリア流サッカーをやるつもりはない」と強気。
前監督マンチーニが辞任し、後任として昨季までアヤックスを率いていたデブールが急遽招聘されたのは、開幕まで2週間を切っていた8月8日のことだ。
「今季の目標はCL出場圏。カウンターに頼るのは選手が疲弊したときだけ。イタリア流に“前線に2人だけを残して、後は守備”なんてサッカーをやるつもりはない」
就任時に強気の抱負を語る一方、「インテルが完全に私のチームになるのは4カ月後、つまり1月だ」とシーズンの長丁場も見据えていた。
ただし、現役時代にアヤックスやバルセロナで鳴らしたかつての名ストッパーに、時間的余裕はまったく与えられなかった。
米国ツアー参加組はシーズンに向けた体力作りや戦術指導などを欠いたまま長期間の連戦と移動で疲弊し、EURO出場組のコンディションはバラバラ。初めて知り合う選手たちと理解し合うために最適な場であるはずのテストマッチもセルティックとの1試合だけ。何より英語での指示が、選手たちにほとんど理解されない弱点も浮かび上がった。
開幕戦では付け焼き刃の3バック採用で周囲が唖然。
心身ともに準備不足のまま敗れた開幕キエーボ戦で、監督デブールはぶっつけ本番で3バックを採用して周囲を唖然とさせた。試合後、「(EUROに出場した)MFカンドレーバとFWエデルは、イタリア代表で3-5-2に慣れているはずだと思ったから」と、付け焼き刃の3バックに賭けた理由を説明したが、闘将コンテ(現チェルシー)が古巣のユーベ守備陣をベースに2年間心血注いで鍛え上げたアズーリと、就任して13日のインテルを並べるには無理がありすぎた。
ペスカーラ戦で見せた3人同時交代という策も、言い換えれば、デブールの先発の人選と対戦相手への研究が誤っていたことの証左に他ならない。
選手たちの間からも「俺を3冠時代のマイコンやサネッティと比較されても困る」(DFダンブロージオ)といった愚痴が噴出し、移籍市場での赤字に起因するFFP(ファイナンシャル・フェアプレー規定)違反処分によって、今季のELにFWヨベティッチやMFコンドグビアなど大枚はたいて獲得した選手たちがことごとく出場できないことも判明。チームマネージメント上の問題は山積している。