セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
インテル、ユーベ撃破もまだ不安定。
デブール新監督は長友をどう使う?
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2016/09/23 08:00
現役時代ロングフィードの名手として鳴らしたデブール新監督を納得させるパフォーマンスを。長友は単なる“まとめ役”で終わるつもりはない。
補強予算は1億ユーロ超えで“ブランニュー”化。
それでも、南京の蘇寧グループの資本下に入ったインテルは、今夏の補強予算としてリーグ2位にあたる1億1380万ユーロを費やした。
EURO王者ポルトガル代表の中心であるMFジョアン・マリオはすでにセリエAへ順応し始めているし、今はまだ調整中のリオ五輪金メダリストのFWガビゴル(ガブリエウ・バルボサ)が攻撃陣に加われば大きな起爆剤になるだろう。EL王者セビージャから引き抜いたいぶし銀の司令塔MFバネガも、入団当初の試運転状態からいよいよパスワークのギアを上げてきた。
インテルを1台のレーシングカーに喩えるなら、今季のチームは、メインフレームからサスペンションまで基幹パーツをごそっと入れ替えたブランニューモデルだ。
新パーツに相当する新入団選手が性能アップをもたらすのはわかっている。しかし、彼らが本来の性能を発揮するには、各ポジションに置かれたパーツ同士が馴染み、連動して狂いなく動き続けねばならない。そのためには、高品質の潤滑油がいる。
新顔が多い中、7シーズン目の長友が“潤滑油”に。
キャプテンマークを巻くのはエースFWイカルディだが、潤滑油としての働きを期待したのはDF長友佑都だ。
長友はインテルでの7シーズン目を迎えた。
開幕スタメンの後、右ふくらはぎを故障し2節パレルモ戦を欠場した。代表ウイークをリハビリに当て、ペスカーラ戦でベンチに復帰。調子を尋ねると「大丈夫です」と気丈な答えが返ってきた。
現在のサイドバックには、右にDFダンブロージオ、左にサントンのイタリアコンビが入る。右サイドには新加入DFアンサルディが故障明けに入る可能性が高く、左のサブには指揮官とオランダ語で話せる19歳のDFミアンゲが抜擢された。
移籍市場の度に過酷なポジション争いを強いられる長友だが、今シーズンは輪をかけて厳しいものになりそうだ。背番号55の主戦場は、国内外のカップ戦になるかもしれない。
ただし、元々の強固なベースがないところに個性派の新顔がまた多く加わった今季のインテルにおいて、ロッカールームのまとめ役として長友以上に適役は見当たらない。
先発フル出場したEL初戦は屈辱的敗戦を喫し、チーム全体が「練習試合のつもりか。真面目にやれ」と現地メディアから叱責を受けた。古株の長友にとって汚名返上のチャンスは、今月29日の第2節スパルタ・プラハ戦でやってくるはずだ。