野球場に散らばった余談としてBACK NUMBER
阪神に“掛布二世”の長距離砲を──。
中村GMが次代に託したチームの未来。
text by
酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/09/08 07:00
フレッシュオールスター戦での掛布雅之二軍監督。どこの球場でも、掛布監督は大人気だ。
掛布監督がタネを蒔き、金本監督が芽吹かせる。
「金本監督がいま、若手を使ってくれている。そのなかで、若手はそれなりの結果が出てきている。僕が3年前に来て、いろいろGMと話をしながら、やってきていたことがね。タネをまき、水をあげたものが、金本監督のもとで、ちょっと芽が出始めたかな」
二軍は一軍に戦力を送り込む使命を担いながら、勝負に臨む。ウエスタン・リーグは勝率5割ラインを推移する3位。優勝争いから後退し、決して現状に満足感はないが、掛布はこう続ける。
「甲子園というグラウンドで芽を出さないといけないわけだからね。GMも喜んでくれていると思うよ」
鳴尾浜にファンを呼び込む掛布監督の思惑。
現役時代にミスタータイガースの看板を背負った二軍監督は、これまでには見られなかった特異なスタイルでチームを率いた。
「僕はファームだけど、お客さんを呼びたい。1人でも多くのファンに見てもらって、どんどんプレッシャーを与えてほしい」
2月の高知・安芸キャンプでは午前5時過ぎに目が覚めると、自室の机に向かう。球団が用意した2つ折り名刺にペンを走らせ、サインするのが日課だった。ファンに配り続けて集客。開幕後も鳴尾浜が満員札止めになる盛況の風景は、選手たちをファンの目にさらすことで、緊張感のある環境を整えようとする指揮官の思惑のひとつである。
また、選手の状況を察し、細やかに気を配った。キャンプ中は中堅クラスの坂克彦、小嶋達也を投打のキャプテンに指名。「彼らに、いい刺激を与えたかった」と理由を明かすなど、チームに活性化をもたらそうと策を講じたこともある。シーズン中も若手を言葉で後押し続ける。