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阪神に“掛布二世”の長距離砲を──。
中村GMが次代に託したチームの未来。 

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酒井俊作

酒井俊作Shunsaku Sakai

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2016/09/08 07:00

阪神に“掛布二世”の長距離砲を──。中村GMが次代に託したチームの未来。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

フレッシュオールスター戦での掛布雅之二軍監督。どこの球場でも、掛布監督は大人気だ。

「カケ、お前みたいな選手を育てたいんだ」

 チームの編成責任者だった中村さんには思い描く理想があった。

「カケ、お前みたいな選手を育てたいんだ」

 阪神の主砲として3度、本塁打王のタイトルに輝いたスーパースターは1988年の引退後、現場から遠ざかっていた。ロッテや楽天から監督就任の打診があったが「タテジマに愛着がある」との理由もあって断ったとも聞く。掛布は言う。

「GMに『いつか、掛布を……』という気持ちがあったのは、僕は直接話したことはないけど感じました」

 2013年秋、GM付き育成&打撃コーディネーターとして25年ぶりの古巣復帰に尽力したのも中村さんだった。その思いの根底には高卒のドラフト6位で入団し、猛練習のたたき上げで通算349本塁打を放ち、優勝へと導いた「掛布雅之」の再現があった。いま、鳴尾浜で二軍を率いる掛布は述懐する。

「GMはセカンドでレギュラー、僕もサードでレギュラーになった。その後も僕の引退まで二軍監督やコーチとして、僕の野球を15年間、ずっと見ていた。若い選手がチームの中心に育っていって優勝するというのを見てきている。生え抜きの選手がチームを引っ張り、優勝するタイガースを作りたいという強い気持ちがGMにはあったんだ」

中村GMは横田慎太郎の将来性に掛けていた。

 今年からチーム再建の切り札として、金本知憲が一軍監督に就き、掛布二軍監督とタッグを組む。スローガン「超変革」を旗印に若手の強化は最重要テーマになる。中村さんからは具体的なリクエストもあったという。

「とにかく横田をどうにかできないかと。僕は左打者だから(同じ左打ちの)横田を3年、4年くらいでモノにしてほしいとね」

 フレッシュな戦力の台頭は一筋縄ではいかない。

 期待株の高卒3年目外野手、横田慎太郎は開幕スタメンをつかんだが、持ち味の長打力を示せず、6月中旬以降は二軍で腕を磨いている。その一方で、北條史也や中谷将大、原口文仁ら、昨季まで二軍の「常連組」が一軍戦力として定着した。金本監督は過去に例がないほど、積極的に若手を登用。鳥谷敬やマウロ・ゴメス、藤浪晋太郎ら主力の不振が響いて下位に甘んじるが、成功と失敗を繰り返しながら若手が地力をつけているのは確かだろう。

【次ページ】 掛布監督がタネを蒔き、金本監督が芽吹かせる。

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