甲子園の風BACK NUMBER
写真家 杉山ヒデキ・セレクション。
第98回夏の甲子園、白球の記憶。
text by
杉山ヒデキ(文藝春秋)Hideki Sugiyama
photograph byHideki Sugiyama
posted2016/09/04 11:00
54年ぶりに全国制覇を達成した作新学院。すべての試合に先発したエース今井は最速152キロのノビのあるストレートが冴え渡った。常に冷静な今井だったが全国制覇の瞬間は喜びを爆発させた。
花咲徳栄はエース温存で挑んだ三回戦の作新学院戦。4点リードされ劣勢の4回からエース高橋昂也を登板させる。躍動感溢れる気合の入ったピッチングで観客を魅了するも作新学院の勢いを止めるには少し遅かった。今大会はエース温存が裏目に出るケースが多かった。
準々決勝の北海戦、聖光学院の主将松本は3点を追う7回裏、何としても塁に出るぞという強い思いから、ヘッドスライディングの勢いあまって一塁ベースに頭を引っ掛けて一回転。松本は砂まみれになった顔で照れ臭そうに笑った。
秀岳館の主将九鬼。捕手の九鬼は強気のリードと強肩でチームの危機を幾度となく救ってきた。準決勝で北海に敗れるも最後までキャプテンシーを発揮し、泣き崩れるチームメイトを励ました。県内出身の生徒がゼロということで批判を浴びがちな秀岳館だったが、球児たち自身の三年間の努力とはまったく関係がない。強いキャプテンがまとめ上げた、良いチームだった。