錦織にとっての「しょうがない」とは？

　ただ、同時に今回のオリンピックには錦織にとっていくつかの「しょうがない」があることは否めない。

　1つは今大会からATPポイントがつかなくなったということ。「ポイントがないのは正直寂しい」「ポイントがつかないのでツアーとはまったく別もの」などと言ったが、ポイントさえあれば普段のツアーとメンタル的に同じアプローチで挑めたに違いないのだ。

　もう1つが選手村。

　オリンピック開催年、テニス界では春頃からトッププレーヤーたちが「選手村に泊まるか否か」という話題が出始める。多くの競技のアスリートたちは当然のように選手村に宿泊するようだが、テニスの場合、特にトッププレーヤーは選手村を避けてホテルなどに宿泊する傾向にある。今回も男子のトップ3──ノバク・ジョコビッチとマレーとフェデラーは選手村には泊まらない。

選手村に滞在する“ビッグ4”はナダルだけ。

「選手村で多くの選手たちと過ごしたかったが、多忙な日程を考慮すれば、プライバシーの確保と静かな練習環境が必要」（ジョコビッチ）

　マレーは、他のイギリス選手とともにアパートを借りるそうだ。北京では選手村に滞在したが、ロンドンでは外に宿をとり、金メダルを獲得した。

「本当のことを言うと、北京の選手村ではすごくいい時間を過ごしたんだ。でもテニスはダメだった。コンディションを整えるのが難しくて。それでロンドンでは違うようにしてみたらうまくいったから、今回もメダルを獲得するためには同じようにする必要があると思った」

　フェデラーは北京大会では選手村に滞在したが、部屋の外へ出るたびに国や競技を問わず選手たちからサインや写真撮影を求められ、その経験に懲りたというのは有名な話。プライベートを守るために、今回は会場から130km以上も離れた町に宿泊し、そこからヘリコプターで通うという噂も出ているが、真偽は定かでない。

　彼らとは違う意向を示しているのが、北京大会の金メダリストでもあるナダル。ナダルもフェデラーと似た経験をしているはずだが、北京でそうしたように選手村で他競技の選手などと過ごす時間を楽しみにしているという。

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