錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
ATPポイント無しだが選手村は楽しみ。
錦織圭、リオ五輪での悩みどころ。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byHiromasa Mano
posted2016/07/23 08:00
五輪ではATPツアーとは全く違う環境が待っている。ウィンブルドンでの怪我の具合は気になるが……。
選手村への滞在を決めた錦織が抱く懸念材料。
さて、錦織にも選択肢はあったはずだが、選手村を選んだ。
「本当はホテルに泊まりたい」と本音を漏らしつつ、「安全面とか、僕が知らないことも多いので、そういう面ではビレッジにいたほうが安全。まあ今回はしょうがないですね」と続けた。
本心の「ホテルに泊まりたい」という理由は、「普段は1人で過ごしているところを、選手村だと自由時間が減るし、気を遣わないといけないので大変。普段のように自分の思う通りに行動はできない」からだ。
フェデラーほどではないにせよ、錦織は日本、そしてアジアを代表するスターアスリート。その人気は少なくとも近隣諸国には届く。
他競技のトップ選手をも惹きつけるオーラ。
2年ほど前、JOC杯を冠したテニスのジュニア大会で、女子柔道の金メダリストの塚田真希さんが若い選手たちのために講話を行なってくれたことがある。そのときにこんな話を聞いた。
「選手村で歩いていると錦織選手を見つけたんです。いっしょにいた私の友人が錦織選手のファンだったのでキャーキャー騒いでしまいました(笑)。テニスの選手って他の競技の選手と違っていつも群れていなくて、1人でいる姿を見かけることが多いんですけど、それがなんかカッコいいんですよね。錦織選手もまだ10代だったと思いますけど、落ち着いていてオーラ抜群でした」
プロになる前から一流プレーヤーと接点を持ち、その頃はすでに世界的にも〈新星〉として注目されていた自覚が、そういうオーラになるのだろうと感じたものだ。しかし、今やその錦織オーラは、8年前はもちろんのこと4年前とも比較にならないだろう。選手村での生活は、日本で街中を変装せずに歩くのと同じようなものなのかもしれない。