両国の国旗をくっつけたTシャツで観戦した兄弟の母。

　兄は、敵チームの10番をつけた弟の仕事を淡々と封じ込めた。

　猛攻実らずアルバニアは0－1で負けたが、試合翌日の『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は「グラニトは期待外れだった。兄弟対決はタウラントの勝ちだ」と兄に軍配を上げた。

　アルバニアと戦った翌日、スイス代表MFジャカは、自らの年俸の8割を両親へ渡していることを明かし、世間をあっと言わせた。彼が今夏移籍するアーセナルで受け取る年俸は、500万ユーロは下らない。

　スイス代表のアルバニア人は、兄タウラントも同じく両親へ送金していると述べ、「金はただの紙切れにすぎないし、高級車やリゾートバカンスにも興味はない。俺たちが休暇でやりたいことは、コソボにいる親戚を訪ねることさ。俺たち兄弟にとって、家族こそ何より贅沢なものだ」とすっきりとした顔で語った。

　兄弟対決の本当の勝者は、アルバニアとスイス両国の国旗をくっつけたTシャツを、スタンドで誇らしげに着ていた彼らの母親だったのではないか。

ルーマニアに金星をあげるも、僅差でグループ敗退。

　アルバニアは、開催国フランスとの2戦目でも健闘し、3戦目のルーマニア戦で歴史的な勝ち点3を挙げた。

　だが、決勝トーナメントへ勝ち上がるには、得失点差や総ゴール数で及ばなかった。グループ3位の上位4チームに入るため、トルコやポルトガルなどは日程の都合上、通過のための条件を考えながら戦うことができたが、アルバニアにはそれもかなわず、彼らの敗退は決まった。

　他の初出場4国が揃って決勝トーナメントへ勝ち上がったのだから、デビアージの悔恨は募る。

「何が残念かといえば、3試合を終えてチームのコンディションが上がってきたタイミングで大会を去らねばならないことだ。アルバニアが決勝トーナメントに進んでいたら、対戦国がどこであっても相手を苦しめられただろう」

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