創志学園・長澤監督「プロのグラウンドには……」

　奥浪がプロに入るとき、創志学園高の長澤宏行監督に言われた言葉がある。

「プロのグラウンドにはお金が落ちてるぞ。好きな野球をやってお金をもらえるなんて、こんな幸せなことはないんだから、頑張れ」

　しかしプロといえど、二軍のグラウンドにはお金は落ちていない。奥浪はファームで1年目は84試合、2年目はチームトップの103試合に出場し、ウエスタン・リーグ3位の50打点を挙げた。しかし球団の評価の対象は一軍でのプレーのため、過去2年間、奥浪の年俸は据え置きだった。

　しかし今年は期待が持てそうだ。

　一軍昇格が決まり、恩師の長澤監督に報告した際にも改めてこう言われたという。

「グラウンドに金が落ちていると思って必死にしがみついてこい。プロ野球選手なんてお金を稼いでなんぼや。オレらにはない夢をお前は持ってるんだから、頑張ってこい」

　奥浪に、「ちょっとお金拾えたのでは？」と聞くと、「ちょっとだけです、ちょっとだけ」と笑った。

「これからまだまだ……。今シーズンどうにかしがみついていきたい。その中でどれだけチームの勝ちに貢献できるかというのをもっともっと考えてやっていきたいです」

　チャンスとお金とチームの勝利を拾い集めながら、ガムシャラに貪欲に、奥浪はプロの世界を生き抜いていく。