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ホークス・東浜巨がエースキラーに。
“工藤塾”と特別な調整法で覚醒!
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byHideki Sugiyama
posted2016/06/22 07:00
6月20日に26歳を迎えた東浜。センバツ優勝、東都大学リーグの完封記録と、輝かしい過去を持つ男は、プロ4年目で再び開花しつつある。
「則本を見て勉強になった」
試合後、指揮官の言葉は厳しかった。
「二軍からの報告では、もっと腕が振れていると聞いていた。慎重になるのも分かるけど、バッターに向かっていく気持ちがもっと前面に出ないと。言い方は悪いけど、則本くんのようにね。東浜くんにはもっと大きなピッチャーになってもらいたいと思っている。今で満足してほしくない。もっと、もっと、上を目指してほしい」
東浜と則本は同じ大卒4年目の同級生。エリート街道の東浜に対して、則本はプロ入りまで無名に近い存在だった。だが、東浜は言った。
「則本を見て勉強になった」
チームを背負い、どんな局面でも同じ表情で投げ続ける。その落ち着き。いや、そこには風格があった。
一軍のまま「ミニキャンプ」状態。
そして工藤監督は東浜を二軍に落とすのではなく、一軍に置いたまま「ミニキャンプ」状態でトレーニングを続けさせた。2週間も登板間隔が空き、ようやく1度中継ぎで投げて、5月から先発に戻った。異例の調整法といえる。
「普通は相手投手を意識してマウンドに上がるということはないんでしょうけど、ボクは味方の攻撃中に相手の涌井さんや黒田さんをずっと見ていました。勉強になりますし、ボクも負けたくないという相乗効果にもつながっていると思います」
5月27日の1対0で涌井に投げ勝ったマリーンズ戦(8回無失点)は初回と2回にノーアウト二塁のピンチを背負いながら切り抜けた。6月3日の黒田と激突したカープ戦は初回1アウト満塁を内野ゴロに1点でしのいだ。昨年までの東浜ならば、一気に崩れてしまいそうな場面だった。
「今はどんな時も攻めるピッチングを心がけていますし、いい意味で余裕ができて、自分の間(ま)で投げることができているのがいい結果につながっているのかもしれません」