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本田圭佑とミラン、最後の“捨て身”。
コッパ決勝でファンを沸かせた変貌。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2016/05/24 07:00
コッパイタリア決勝後、帰国の際には「ひどかった」とシーズンを振り返った本田圭佑。ミランには身売りの噂もあるが……。
ようやく訪れるオフに、本田は何を思う。
オフィシャルスーツに着替え、ミックスゾーンに現れた本田の口は、真一文字に結ばれたままだった。極度の筋肉疲労のせいか、オリンピコの地下通路をチームバスへとゆっくりと歩く後姿はどこか強張っていた。
「もし、今夜自分たちがやれたことをシーズンの間ずっとできていたなら」
主将モントリーボは、後悔に顔を歪ませた。
「カンピオナートの結果は、きっと別のものになっていたはずなんだ」
キャプテンが抱く悔恨は、本田や心あるチームメイトたちにも共通する思いのはずだ。若いDFカラブリアやこれまでタイトルに恵まれてこなかったMFボナベントゥーラも、逃したチャンスに大粒の涙をこぼした。この敗戦は後を引く。
ただ、捨て身の覚悟で臨んだからこそ、本田らは番狂わせにあと一歩まで迫ることができた。矛盾と混迷に満ちたシーズンを経て、この苦い敗北がクラブ改革へ向けた本当の引き金となる可能性もある。
シーズンのラストゲームを終えたイタリアの夏はもう近い。
ようやく訪れるオフに、本田は何を思うのだろう。