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大宮のGKとして、古巣・浦和と戦う。
加藤順大「言えなかったお別れを」
text by
轡田哲朗Tetsuro Kutsuwada
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2016/05/07 11:00
2011年から2013年にかけて浦和の正守護神だった加藤順大。浦和サポーターはどんな声を彼にかけるのだろうか。
「ダービーなんですよ。要はそこなんです」
「大宮からオファーが来たという瞬間に、何も迷わずに決めました。逆に面白いなと思いましたよ。自分が育った場所だし、昔から知っているわけじゃないですか。これは縁だなと。行くしかないという気持ちになりましたね。契約に関する話は細かいことがあるものですけど、その前に『行きます』と言っちゃいましたからね」
サッカーから離れた時間を長く過ごした大宮の街だが、それを境に加藤を取り巻く状況も少し変化したのだという。加藤は「実はね」と含み笑いしながら話し始めた。
「中学、高校から大宮で知っているお店が多いわけじゃないですか。僕がアルディージャに入った瞬間に『隠してたんだけど、やっと応援できるよ』と言われて、その店の方が大宮のサポーターだったことが結構あるんですよ。急に、大宮を前面に押し出してくるんですよね。個人として応援してくれていた人が、今は全てを応援してると言ってくれて、面白いものですよね」
現在浦和は、リーグで1試合消化が少ないにもかかわらず首位を走っている。昨季にJ2を優勝して1年でJ1に復帰した大宮は、加藤がスタメン出場し始めた第5節のジュビロ磐田戦から6戦無敗の5位。勝ち点4差の上位対決としてこのダービーに臨むことになった。
「楽しみな気持ちが強いですよ。よく、ウメちゃん(梅崎司・浦和)とも食事に行くけど、絶対にノブちゃん(加藤)から点を決めるからとは言われます。でも、意外と冷静ですね。試合前も普段どおりでいたいですし、あまり考え過ぎても良くないです。浦和は今、首位のチームですし、僕らはJ2から上がってきてチャレンジャー。ただダービー、なんですよ。要はそこなんですよね。絶対に負けられない」
大宮守備陣の強みは、相手に合わせられる。
浦和のミハイロ・ペトロヴィッチ監督による戦術も熟知している加藤は、「こういう試合になるんじゃないかっていうイメージはありますよ。ただ、試合前に話せることと話せないことはありますよね」と話す。
一般論としての、浦和がボール保持率を高める展開になってということではなく、味方に伝えるのはもっと細かい部分だ。しかし、大宮の守備陣はそのアドバイスを生かす能力があると信頼感を語っている。
「まずはディフェンスがしっかり耐えることかなと思います。うちの強みは、相手に良い意味で合わせてしっかり守れることですよ。相手に合わせるという言葉には、あまり良いイメージがないじゃないですか。ただ、相手の攻撃陣やキーになるところを潰すという意味では長けていると思っています。守備陣と、僕の感覚は似ているのですごくやりやすいですよ。思ったように、勝手に動いてくれるというか(笑)」