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西武を支える一軍最年長投手。
31歳・牧田和久の活躍は変幻自在。
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/05/04 08:00
現在の球界では数少ないアンダースロー投手。無走者時の投球間隔は8.2秒と両リーグ最短で、NPBから「スピードアップ賞」を贈られている。
「いつ投げるか分からない」大変な役割。
自身も現役時代は救援投手として活躍し、その苦労も知る潮崎哲也ヘッドコーチは今シーズンの牧田をこう評する。
「普通のセットアッパーなら8回に合わせて準備しましょうとか、クローザーなら9回に合わせましょうという風に規則正しく準備をすることができるんだけど、今年の牧田に関してはいつ投げるかわからない、しかも何イニングス投げるかもわからないという大変な役割ですね。負担をかけてしまっているという気持ちは強いです。彼が結果を出せるからこそ、やってもらっているんだけど、本当にありがたい存在ですよね」
4月22日にはクローザーの高橋朋己がヒジの張りを訴えて登録抹消。チームはますます牧田の力に頼らざるを得ない状態だ。
「自分でも、他にこの役割をできる投手はチームにいないと思うので、どんなにキツくてもやるしかないと思っています」(牧田)
先発、中継ぎ、救援とこなす稀有なオールラウンダー。
牧田は入団した2011年、クローザー不在というチーム事情によりシーズン途中、先発からクローザーに転向した。55試合に登板し、22セーブポイントを記録して新人王を獲得。その翌年は先発に専念し13勝を挙げる。'13年~'14年は先発ローテーションの一人としてそれぞれ8勝を記録し、昨年はシーズン途中から再び救援に回った。
これまでの牧田を振り返ってみても、そのときどき、チーム事情に合わせて役割を変幻自在に変えられるライオンズの「切り札」的な存在だった。日本球界を見渡しても、これほど先発、中継ぎ、救援、何でもこなせるオールラウンダーは稀有である。「先発が足りなくなっても、今のポジションを外したくないくらい今シーズンのチームにとっては大きな存在」と潮崎コーチも語る。
「特に今年はストレートに力がありますね。牧田のプロ入り後、どのシーズンと比較しても、良い方に入る状態じゃないかな。牧田の真っすぐに相手の打者が差し込まれているし、真っすぐがいいので、他の変化球が全部生きてくる。やはりピッチャーは、真っすぐが生命線なのだと今シーズンの牧田を見て再認識させられました」(潮崎コーチ)