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過去の“ブッフォン2世”とは違う!
ドンナルマはミラン唯一の希望。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2016/05/05 10:00
現在のミランでおそらく最も高額の移籍金がつくドンナルマだが、ベルルスコーニ会長は「売らない」と明言している。
これまでの“ブッフォン2世”と決定的に違うこと。
ドンナルマがこれまでの“ブッフォン2世”たちとちがうのは、本家同様、最初からトップクラブでデビューし、正守護神の座をすぐに勝ち取った点だろう。
有力な“2世”の一人だったGKぺリン(ジェノア)は、先月上旬に右膝前十字靱帯を断裂。今夏のEURO2016フランス大会出場が絶望となったことで、ブッフォンとシリグ(パリSG)に次ぐ第3GKの座がポッカリ空いた。
今年3月、飛び級招集されたU-21イタリア代表で、17歳28日の史上最年少デビューを果たしたばかりのドンナルマだが、アズーリ監督コンテは“ジージョ”のEURO本大会招集を本気で考え始めたらしい。
ドンナルマには、キックオフ前に小さな儀式がある。
本田圭佑らチームメイトたちと激励のハグを交わした後、ゴール裏のサポーターへ挨拶し、ゴールマウスへたどり着く。
高さ2.44m、幅7.32mの鉄柱に囲まれた四方が、“ジージョ”の守るべき門だ。
左のポストを撫でた後、ゴールラインに沿って歩きながら、右手を上に軽く伸ばす。彼のリーチなら、ジャンプしなくても、クロスバーに余裕で届く。
クロスバーにちょんと触って、いくばくかの幸運を祈る。小さなルーティンが、17歳の心を落ち着かせる。
「どんなスタジアムでも、こうすればプレッシャーは感じない。ブッフォンの後継者と言われることは嬉しいけれど、将来については正直何も考えていない。今、大事なのはいい練習をすること。毎日少しずつでも上手くなりたい。特にノイアーの足技と飛び出す技術は盗みたいね」
GK当たり年の締めくくりに、彼を見たい。
ミランとユベントスは、21日にコッパイタリアの決勝戦を控えている。準決勝までは両チームともに第2GKをゴールマウスに立たせてきた。
ただ、ユーベのGKネトは故障中で、ブッフォンの出場が確実だ。ミランのGKアッビアーティにしても新米監督ブロッキは決勝戦での起用を明言していない。
ドンナルマという新星GKの出現は、混乱を極めるミランにおける一条の救いだった。GKの当たり年の締めくくりに、ミラン再建の希望であるドンナルマが巨星ブッフォンへ再び挑む一戦を見たい、と願うのは、“ジージョ”の両親ばかりではないだろう。