月刊スポーツ新聞時評BACK NUMBER
プチ鹿島、3月のスポーツ新聞時評。
「野球だけ」の明るい記事が読みたい!
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph byNanae Suzuki
posted2016/03/30 10:50
開幕前の順位予想では、多くの識者が首位に挙げている金本阪神。「超変革」はチームを激変させている!
新聞社が親会社の巨人が、なぜ取材力負けたのか?
巨人の親会社は言わずと知れた読売新聞。日本で最大の発行部数を誇る新聞である。調査報道という言葉もあるとおり、新聞は情報を洗いざらい調べるプロ。
その新聞社を親に持つ巨人が、これまでの調査で「高木京介の関与がわからなかった」というのだ。そして今回「週刊文春」にヤラれた。取材力で負けてしまったことになる。新聞が週刊誌の調査力に負けるわけがない、というのなら「では手を抜いていたのか?」ということになる。それはもっとマズい。どちらに転んでも言い訳できない敗北なのである。
一方、野球賭博で巨人を追放された笠原元投手は産経新聞の取材に新たな証言をした。産経は一面トップで「巨人選手 公式戦で現金」(3月14日)と伝え、サンケイスポーツも「笠原暴露 巨人公式戦で現金やりとり」と報じた。いわゆる「円陣声出し問題」である。このあと他球団もほとんどやっていたことも判明する。逆に言えば、笠原氏側が「小出しにする情報」がもうその程度のネタしか持っていないとの考察もできる。
この「円陣声出し問題」について各紙の読み比べをしてみたい。
球団間で見る間に延焼していった金銭授受問題。
デイリースポーツは当初「巨人公式戦で現金やりとり」「ファンからエールと怒号」(3月15日)と伝えたが、翌日は一面で「阪神も金銭授受」(3月16日)と報じる急展開。
《対岸の火事ではなかった。》と書いた。
「対岸の火事ではなかった」という出だしはちょっと面白かったけど、同日のデイリーの「記者の目」というコラムは「この事案の前提として忘れてはいけないのは、いわゆる巨人4選手の賭博問題とは一線を画すものだということ」と書いていた。まったく同感だ。
“円陣声出し金銭”は褒められた話ではないが、いつのまにか「暴力団とのつながりがありそうな実態」と「カネだらけの球界の実態」とが、ごちゃまぜになってきていることが私は不思議でならなかった。
デイリーの「記者の目」はこうも書いた。「ただ、軽く見てはいけない。古くから似たようなことが慣習としてあったとしても、先の賭博問題から野球界の倫理感に対して周囲の目は厳しさを増しているからだ。」
今回の円陣声出し問題では各紙「記者の目」緊急コラムがあったが、デイリーが具体的でいちばんよかったと私は思う。
他紙にみられた「子どもの夢を壊すな」というような文章は心に響かなかった。なぜなら、円陣やノックに金を出すことが「昔からの慣習」であるならば、「子どもの夢を壊すな」という紋切り型のお叱り言葉もまさに「昔からの慣習」であるからだ。便利なマスコミ言葉であり、ぼんやり続いているという点では円陣金銭と同じなのである。
この慣習、いつから始めたのかという素朴な疑問がある。