月刊スポーツ新聞時評BACK NUMBER
プチ鹿島、3月のスポーツ新聞時評。
「野球だけ」の明るい記事が読みたい!
posted2016/03/30 10:50
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph by
Nanae Suzuki
今月は「なでしこジャパン」をめぐる報道から。アジア最終予選でふるわず、リオ五輪出場を逃した。
「なでしこ澤ロス 厳しい現実」(3月1日 スポニチ)
「敗退なでしこ 澤引退で分裂」(3月8日 日刊スポーツ)
おや? と思ったのが次だ。
「澤さん立て直す、自民の出馬要請断り高倉監督支援に」(3月10日 日刊スポーツ)
元なでしこジャパン主将の澤穂希さんが、自民党サイドからの「打診」を断っていたという内容。
《党側は、なでしこジャパンで見せた澤さんのリーダーシップ、高い知名度を評価。比例代表か、現職以外に新人の擁立が決まっていない東京選挙区を念頭に、澤さんサイドに働きかけた。》
澤氏はサッカーの現場にこだわり打診を固辞したと記事は伝える。ここで「現職以外に新人の擁立が決まっていない東京選挙区」という具体的な記述にも注目したい。このあと自民党はどうやら乙武洋匡氏に声をかけたとされる。最近になって乙武氏の不倫スキャンダルが報じられたことを考えると、この「パス」の流れにしみじみしてしまう一件でもあった。
なでしこの失墜どころではなかった日本球界。
なでしこの五輪予選敗退が決まると、各紙の検証企画がはじまった。タイトルを並べてみる。
「なでしこ落日」(スポニチ 3月8日~)
「凋落なでしこ」(日刊スポーツ 3月8日~)
「なでしこ 枯れるな」(サンスポ 3月8日~)
一般紙でも検証企画をやっていた。「なでしこ失墜」という連載タイトルは読売新聞。3月9日からスタート。
しかし、前日の3月8日はプロ野球・巨人の野球賭博問題で、新たに高木京介投手が関与したことが明らかになった日だ。読売は他人のことを「失墜」と言ってる場合じゃなかったはず。
高木京介の件、いろいろな論点があると思うけど、私は「またしても新聞が週刊誌に負けた」と感じた。またしても、というのは近頃は新聞よりも週刊誌のスクープのほうが社会を揺るがしているからだ。芸能ネタだけでなく政治・社会ネタでも。野球賭博もそう。