Jをめぐる冒険BACK NUMBER
G大阪と広島、今年の狙いは「中央」。
サイド攻撃巧者の両クラブが進化中。
posted2016/02/22 18:00
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
AFLO
シーズンの幕開けを告げる富士ゼロックススーパーカップは、昨季のJ1王者サンフレッチェ広島が天皇杯覇者のガンバ大阪を3-1で下した。その試合後の会見場とミックスゾーンで、両チームが奇しくも同じポイントを「進化の一手」と考えていたのが印象的だった。
「今年やっていかなければならない部分――中央からより崩していくという部分では、まだ改善していかなければならない」
そう振り返ったのは広島の森保一監督だ。ハーフタイムにも「中央にどう起点を作っていくのか」について選手たちに話したことを明かした。
一方、G大阪のキャプテン遠藤保仁は「細かくパスをつなぎながら真ん中を狙っていくのは、今年の特徴のひとつになると思う」と語った。
キーワードは、「中央攻略」。どうやらそこに、Jリーグを牽引する両チームの上積みのポイントがあるようだ。
そもそも正面から相手を崩してゴールできるなら、それが最短距離で、最も効率がいい。だが、相手も警戒して中央のガードをがっちり固めているから、攻撃側は人の密集していないサイドに攻略の糸口を探ることになる。
サイドを攻略して相手のセンターバックを引っ張り出せれば、中央のガードを薄くできる。また、サイドを攻略すれば、相手DFはボールの方向、つまり横を向かざるを得なくなり、ボールとマーカーを同じ視野に捉えるのが難しくもなる(いわゆる「ボールウォッチャー」の状態だ)。「サイド攻略はゴールへの金脈」と言われるゆえんだろう。
広島のサイド攻撃はとらえどころのない三段構え。
広島とG大阪はいずれも「幅」をうまく使って相手を攻略するお手本のようなチームだ。
広島はリーグ屈指の突破力を備える右ウイングバックのミキッチと左ウイングバックの柏好文が1対1の状況でガンガン仕掛ける。そこに2シャドーを務める茶島雄介や柴崎晃誠がサポートに駆けつけ、コンビネーションによる崩しもある。この日、広島の右からのアタックに対応したG大阪の左サイドバック藤春廣輝は試合後、疲労困憊の体で振り返った。
「茶島とミキッチ、ずっと2対1の状況だったので疲れました」
もっとも、51分に生まれた先制点のシーンでGKとDFの間に絶妙なクロスを放り込み、佐藤寿人のゴールをアシストしたのは、ミキッチでも茶島でもなく、右ストッパーの塩谷司だった。一の矢、二の矢のみならず、三の矢まで備えている。これこそ、広島のサイド攻撃が分厚い要因だろう。