マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
平沢大河は打撃も守備もすでにプロ!
ロッテ合同自主トレで見た“商売人”姿。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/02/15 12:10
ロッテにとって久々の高校卒ドラフト1位となった平沢大河。3月25日の開幕戦で彼の姿は見られるだろうか。
打撃も早くもプロ仕様。自分で気づいて直せる男。
ゴロの打球を捕った瞬間、もう投げている。打球に体の動きを合わせるタイミングがすばらしい。快適なタイミングで捕球できるから、ほぼ同時にスローイングに転じるリズムが自然に生まれている。
頭で考えてやっている動作じゃない。
打球という刺激に対して、体が勝手に反応している。
捕った高さで投げられる姿勢の低さは、逆に明確な“意識”のもとになされているアクションだ。送球のすべてが一塁手の顔から下に集まっている。
新しい環境に入って2週間たらず。なのに、打球が飛んで来る背景の景色にもなじんでいる様子。適応能力が高い証拠だ。
ふわっと投げてくるボールを打つ程度の「ハーフバッティング」の段階だから、そっちのほうはまだなんとも言えない。
ただし、金属バットの名残りでヘッドが下がってスイングした直後にはすぐ修正し、次のボールはヘッドを存分に走らせて捉えられる。「修正能力」はさすがに非凡だ。
自分で気づいて自分で直せる。手のかからない高校生ルーキーだ。
大谷智久の制球力をルーキーが盗んでくれたら。
ただ、キャンプを通してもったいないな……と思ったことが2つ。
昨シーズン、中継ぎのエースとして35HPをマークした大谷智久投手が、その日参加していた。
入念なアップを終えて、大谷投手がブルペンに入った。立ち投げでも、踏み込んでくる左足の位置とボールを放すリリースポイントがいつも同じ。まだ1月なのに、構えたミットに9割方きめてくる。それは見事なものだった。
私にとっては早稲田大野球部の後輩であり、彼が社会人・トヨタ自動車のエースだった頃、「流しのブルペンキャッチャー」でピッチングを受けてもいた。
ここ(リリース)が全部いっしょだね!
ブルペンから上がった大谷投手に思わずそう声をかけたら、
「いやー、ぜんぜんです、自分なんて」
元気な声が返ってきた。
思わず、まわりを見回してみた。
今のひと言、ルーキーたちが聞いていてくれたら。もっと言えば、さっきのブルペンでのピッチングを見ているルーキーが1人でもいてくれたら……。
昨シーズン、64イニング投げて四死球わずか7という脅威の制球力の秘密を気づいてくれるルーキーがいてくれたなら。
大谷が投げるんだ、勉強させてもらって来い! とルーキーたちを導ける先輩がいたら、成田翔(秋田商)あたりにとって、今日のなによりの収穫になったのに。