マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
平沢大河は打撃も守備もすでにプロ!
ロッテ合同自主トレで見た“商売人”姿。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/02/15 12:10
ロッテにとって久々の高校卒ドラフト1位となった平沢大河。3月25日の開幕戦で彼の姿は見られるだろうか。
ファンとの関係性も今こそが練習の時期。
そして、もう1つのもったいなかったこと。
9人のルーキーと若手の現役が3、4人。たったそれだけの選手しか参加していないのに、今日のスタンドには100人を超える熱心なファンたちが詰め掛けていた。
ほとんどの方たちのお目当ては、平沢大河に成田翔。前の日には、彼らのサインが欲しくて、夜遅くまで球場付近に残っていた女性ファンが何人もいたと聞いた。
いちいちサインとか、握手とか、そういうことになると球団にとってもいろいろ“面倒”があるのだろうが、ならば練習の最後に、ファンでにぎわうスタンドに向かって、平沢大河なり成田翔なりが大きな声で「感謝のメッセージ」を送る。
そういうことだって十分ファンとの交流になるし、人前で自分の意思をはっきり表明するいい練習にもなると思うし、何よりファンという存在のありがたみを実感できる機会になるのではないか。
えらい人を連れてきて、半分いねむりしながら結構な講話をうかがうのも大切だろうが、教育の機会というのは、むしろ野球の現場の思わぬところにさりげなくころがっているものだ。
数年前にDeNAで聞いた三浦コーチの至言。
思い出した場面がある。
もう何年も前。今の横浜DeNAの新人合同自主トレーニングでのことだ。
ブルペンに入ったルーキー投手の最初の1球が、捕手の頭上高く抜けてしまった。
「こりゃ! 最初の1球を大事にせんかい!」
ミットを構えていた三浦正行二軍バッテリーコーチの爆声が轟く。
2009年、58歳の年までみずからミットを構え、剛球を受け止めながらブルペンで投手の指導にあたった異色の指導者だ。
「キャッチボールの最初の1球、ブルペンの最初の1球、ゲームでマウンドに上がったら、投球練習の最初の1球。これを大事に投げんかい! そうすれば、バッターへの最初の1球も大事に投げられるんだよ!」
野球の指導書のどこにも書いていない現場の事実。見事な説得力だった。
「最初の1球を大事にするのは、ピッチャーのエチケットじゃ!」
こんないい言葉が、いつの間にか、どこかに吹っ飛んでしまった。
「キャンプに行ってからじゃ遅いんです。新人合同自主トレの最初に、きちっと教育しておかないと」
30年以上におよぶプロ野球生活の中で、脱落していった投手を何百人と見てきた人の絶対譲れない“オキテ”であった。