猛牛のささやきBACK NUMBER
甲子園準優勝でなぜドラフト6位?
佐藤世那の「ハンデと野球カード」。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/02/09 12:00
新入団選手発表で、球団マスコットとともに笑顔の佐藤世那。甲子園準優勝投手にしては大きな背番号67が彼の立場を物語る。
「呼ばれなかったらすごく恥ずかしいなって」
しかし、4巡目の指名でも佐藤世那の名前は呼ばれない。
「そこから後は、もうどうしようかなと、頭が真っ白でした。あれだけ騒がれて、甲子園でも投げたのに、それに記者の人たちもみんないましたし、待っている人が大勢いるのに、これで呼ばれなかったらすごく恥ずかしいなって……」
大学進学が頭にちらつき始めた時、オリックスの6位でようやく名前を呼ばれた。待ち始めてから約2時間半が経っていた。
「オリックスに選んでもらえて、もう本当に、ホッとしました。正直、オリックスというのは思ってもみなかったので驚きましたけど(苦笑)」
実績と指名順位の乖離の理由は?
甲子園やU-18で実績を残した選手が、なぜどの球団にも上位で指名されなかったのか。
佐藤は右腕のテークバックが大きく、肘をたたまずに投げる「アーム式」と言われる投球フォームだ。一般的には怪我をしやすいと考えられており、それが各球団の評価に影響したと言われる。
佐藤は中学生の頃、周囲からのアドバイスもありフォームを変えようとしたことがあった。しかし結局は元のフォームが自分には合っているという結論に至った。
「自分はこのフォームが一番いいですし、これだからたぶんここまでやってこられたと思う。怪我をするとか、いろいろ耳に入りましたし、たぶん自分が自分を見ても、『あ、怪我しそうなフォームだな』と感じるとは思うけど、それだったら怪我をしないような体を作ればいいだけです。周りの声を全部が全部受け止めて気にしていたらきりがなかったので、そこはしっかり自分で割り切ってやってきました」