サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
韓国相手に達成した最後の“宿題”。
「逆転できない」を払拭した3ゴール。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byTakuya Sugiyama
posted2016/01/31 12:00
2ゴールともに、“ジャガー”という愛称に相応しいスピードを発揮した浅野らしい形だった。
韓国の動きが後半に落ちるのは「理解していた」。
前半、日本は中盤で相手のプレッシャーに負けてミスを連発。17分には先制を許し、ほとんどいいところなく前半を終えた。
反撃に出るはずの後半開始早々47分、逆に韓国に2点目を献上した。
だが驚いたのは、この時の日本選手の落ち着きようだった。2点目を失い、さすがにダメージは大きいかと思いきや、彼らは冷静に「その時」を待っていたのである。
「韓国は後半に失点することが多く、動きが落ちてくるというのは分析でみんな理解していた。だから、2点目を失っても絶対にチャンスがくるし、1点取れば分からなくなると思っていた」
中島翔哉は、そう語る。実際に、後半15分過ぎから韓国の選手の足が止まり始めたのを選手たちは見逃さなかった。
また遠藤は、「自分の中ではこういう展開(先制される)も予想して、そういう時にどうするのか、ずっと考えながらやってきましたし、みんなもそれは考えていたと思います」と、精神的な準備ができていたことを明かした。
大会前のこのチームだったら、ここまで冷静に相手チームの状況を理解し、試合の流れを読みながら自信を持ってプレーすることは難しかったはずだ。大会を通じて、彼らは大きく成長したのだ。
試合をひっくり返すには、運だけでは足りない。
さらに驚いたのは、「ここぞ」という点を取るタイミングを逃さず、一気に畳み掛けて同点に追い付いたことだ。
後半67分に浅野が矢島のスルーパスに反応して素晴らしいスピードでゴールを決めると、その1分後には矢島がクロスボールに飛び込んでヘディングで同点ゴール。韓国の選手が動揺している隙を見逃さず、さらに強烈なダメージを与えるゴールだった。
そして81分、中島が出した浮き球を、浅野が相手DFと体を入れ替えるようにして収め、独走。GKの位置を見極めて冷静にゴール右隅へ流し込んで逆転に成功した。
0-2から追い付いて試合を引っ繰り返す、というのは、幸運だけではなく、チームに力がなければ不可能な芸当である。これまで先制された試合を逆転した経験がない彼らがそれをやってのけたというのは、大会を通じてそれだけの力を身に付けてきたということなのだ。