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年俸総額276億円、1勝あたり3億円!?
ヤンキースの「金で勝つ」スタイル。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byGetty Images
posted2016/01/28 18:15
昨年、右肘の骨棘(ねずみ)を取り除く手術を受けた田中。復活をアピールするシーズンにできるか。
セイバーメトリクスは流行ったが……。
前回のコラムでも少し書いた『Moneyball: The Art of Winning an Unfair Game(マネーボール)』が発売されて以来、「セイバーメトリクス(野球の統計分析学)を駆使する≒独自の視点で過小評価されている選手を安価で獲得する」のが賢明なチーム構築法だという認識が広まった。
だが、だからと言って安上がりな補強などする必要はない。ヤンキースにもセイバーメトリクスを扱うデータ部門は存在するが、選手を獲得する時に資金面で他球団を圧倒できるのが“帝国”たる所以なのだから、多少の効率の悪さに固執する必要はないのである。
ただし、1990年代半ばからの“もっとも新しい黄金期”を支えたデレク・ジーター遊撃手が2014年に引退したことが、一つの転換期になったのは間違いない。ヤンキースは「競争力を維持しながら若返りを図る」というチーム構築法を推し進め、高額年俸の主力選手を抱えたまま、田中将大投手(27歳)やディディ・グレゴリウス遊撃手(25歳)らの実力者を獲得してきた。その成果が昨季の地区2位≒「ワイルドカード獲得」であり、3年ぶりのプレーオフ進出だった。
主力級3人を獲得、ベテランは軒並み残留。
ヤンキースが今オフに補強した主力級の選手は今のところ、27歳の救援左腕アロルディス・チャップマン(前レッズ)と、スターリン・カストロ二塁手とアーロン・ヒックス外野手の26歳コンビ3人である。40歳の指名打者アレックス・ロドリゲス、38歳のカルロス・ベルトラン外野手、35歳のマーク・テシェーラ一塁手、35歳の左腕C.C.サバシア投手、32歳のジャコビー・エルスバリー外野手、ブレット・ガードナー外野手、31歳のブライアン・マッキャン捕手、チェイス・ヘッドリー三塁手、とベテランばかりの主力の平均年齢が、少し下がったわけだ。
「選手年俸総額が大幅に減った年は必ず、(その資金を)出来るだけチームに還元させてきました。今オフはそういうことが起きなかっただけのことですよ」
1月20日から始まったオーナー会議で地元紙にそう語ったのは、ハル・スタインブレナー最高経営者だ。宿敵レッドソックスが一人の先発投手=左腕デイビッド・プライス(前ブルージェイズ)に7年2億1700万ドルを投じたのとは対照的なオフになったが、何だか油断できないような気がする。