「この優勝に決して満足していません」

「僕たちはこの優勝に決して満足していません。将来、僕たちがこの経験を生かして、どう成長していくか。それがお世話になった方々への本当の恩返しだと思っています。成長した姿を見ていてください」

　話すテンポ、声の張り、そして起承転結。珠玉のスピーチだった。会場からは感嘆の声と、割れんばかりの拍手がわき起こった。

「木原力斗コーチ（選手権優勝時の監督代行）から『優勝したことが恩返しではなく、優勝してからそれを（今後の人生に）生かして、どうなっていくか。それが本当の恩返しだ』と言われたので、その言葉をイメージしました。僕らが将来、優勝の経験を生かして成長していくという決意を聞いて欲しかったし、見て欲しかった」

「大学では最後に勝てるように」

　それを今、自らの力で体現している。優勝後、彼は筑波大学に進学。昨年関東大学リーグ2部に降格したチームは、1年での1部返り咲きを目指していた。その中ですぐに頭角を現すと、夏前には不動のレギュラーを掴み、チームの1年での1部昇格に貢献。リーグ新人賞を獲得した。

「凄く充実した1年でした。『選手権の優勝キャプテン』というプレッシャーはありませんでした。たとえ周りからはそう見られていても、選手権優勝後に日本高校選抜から漏れた事実が僕にはありました。僕は高校選抜から漏れたCB。そこで個人として『大したことがない選手』だと再認識したので、大学からイチからやるしかないと素直に思えた。優勝はあくまで星稜というチームとしての結果であって、個人としては最後に負けたので、大学では最後に勝てるように、しっかりやらないといけないと思っています」

 「大学での勝利」は即ちプロになること。しかも「即戦力として活躍できる存在」（鈴木）になること。

「今年は自分以外のDFが全員4年生だったので、来年は2年生でもDFリーダーになることが最低条件だと思います。それにもう一つ付け加えると、目の前のFWに絶対に勝つというスキルを高めないといけません。相手のエースを自分が抑えることも絶対条件です」

　あの歓喜から1年。心身ともに逞しくなった鈴木大誠は、さらに自分に厳しく、将来を明確に捉えている。

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