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日本人選手はアジアの強豪へ移籍せよ。
バルサやバイエルンと戦うもう1つの道。
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph byAFLO
posted2015/12/25 16:05
CWC準決勝でスアレスとマッチアップする金英権。韓国代表としてもユース世代から活躍し続けている25歳。
得意の戦術を無効にされたバルサのプレス。
李の答えに驚いた。
「バルサのプレスが速すぎたんですよ。だから、ロングキックすら蹴らせてもらえなかった。時間とスペースが全くなかった」
確かにショートパスより、ロングキックのほうが時間を要するプレーだ。顔を上げて視野を確保し、キックを大きな動作でやらなければならない。
アル・サッドの場合はこれが元々のチーム戦術なので、それが無理となると打つ手がなくなる。一方、このロングキック頼みの戦術は、技術的に相手より劣るチームが「苦し紛れ」「一か八か」という時に使う正しい戦術でもあるはずなのだが……それすら、バルサ相手だと封じられるとは。
相手のプレスが厳しくて、ショートパスをつなげなかった、苦し紛れにロングキックを蹴らざるを得なかった、という話はよく聞くが、それすら出来ないという状況はちょっと想像がつかなかった。
アジア代表は欧州代表に対して“何も出来なかった”。
4年後の2015年。今度は中国クラブ・広州恒大のCBとして韓国選手・金英権がクラブワールドカップに出場を果たす。
そして、再びバルセロナと対戦した。
アル・サッドと似たようなことの繰り返しだった。アジア代表は“何も出来なかった”。そう言っても過言ではない試合展開だった。
DFラインでボールを持つ。MFに当てる。この時点でバルサの強いプレスがかかっているから、後ろに下げざるを得ない。バックパスを受けた選手はあらかじめ極端にコースが限定されるよう寄せられており、視野を確保して新たなパスコースを探す暇もない。苦し紛れのロングキックは広州自慢のブラジル人FWに届かず、バルサMF陣の網にあっさりと引っかかった。相手DFとの勝負にすらならないのだ。立ち上がりからろくに前を向いてボールに触れられず、前半13分に苦し紛れのキックがあっさりと拾われ、バルサに素早く中央からゴール前に侵入されたシーンなどはその象徴だった。
それでも広州のDFラインは“MSN”のメッシとネイマールを欠いたバルサに対し、39分まで持ちこたえた。しかしバルサにはパスワーク以外にも“力技”があった。ラキティッチのミドルシュートのこぼれ球をスアレスが決めた。