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34歳・村上和弘は再び復活するのか。
2度目のJトライアウトで求めた「和」。
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph bySatoshi Shigeno
posted2015/12/09 18:30
トライアウト前日、村上は仙台のチームメートから激励のメッセージをもらい、さらに気持ちを奮い立たせたという。
崖っぷちで決めたゴールには淡白な反応。
ちなみに、村上が川崎に加入したのは'07年のこと。その前年のオフ、仙台から契約満了を告げられた。そこで村上はトライアウト参加を決断し、翌シーズンの契約を勝ち取った。言わばトライアウトによって、プロとしてのキャリアを伸ばした好例である。
今シーズン終了時のJ1通算試合出場数は202。今回参加したメンバーでJ1最多となる数字を持つ村上は、自身2度目となるトライアウトでも力を発揮した。2本目では右サイドバックながら果敢に中央へ攻撃参加し、左からのクロスをダイレクトで合わせてゴール。配られた資料に記された「プレーのメリハリ」というアピールポイントを体現した一撃だった。
トライアウト後のミックスゾーンで報道陣に囲まれた村上。当然、質問を受けたのは得点シーンだった。
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しかし、その場面については「そうでしたね」との一言だけで、むしろ時間を割いて話したのは別のシーンだった。
サバイバルの場でも、チームの和を意識していた。
「樋口選手が上げたクロスも、いいボールだったと思うんですよ!」
村上が指摘した局面は、自身のゴールから数分後のことだった。
素早い展開から、右サイドの裏に抜け出した樋口がDFとGKの間に絶妙なクロスを送った。しかしそれに対してニア、ファーサイドともに飛び込むタイミングが遅れて押し込むことができなかった。“触れば1点もの”のプレーに対して、村上は笑顔で拍手を送りながらも「いやー、ここで決めないと!」とチームメイトを鼓舞した。
「そもそもチャンスの起点になったのは、僕の縦パスからですからね!」
こう冗談めかしながらも、村上は続ける。
「あのクロスに対して飛び込む選手がいて欲しいと思ったことは確かですね。ただ逆に言えば、フォワードが最後の局面でパワーを使えるように、それ以外のみんなで上手く守備できればもっと良かったですよね。守備以外でも、フォワードの選手がシュート以外のプレーで頑張っていたからこそ、ゲームを上手く進められた部分もありましたし」
トライアウトは、プロサッカー選手としてのサバイバルするための場である。その中でも村上は、“チームで闘う”ことに意義を感じながらプレーしていたのだ。