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34歳・村上和弘は再び復活するのか。
2度目のJトライアウトで求めた「和」。
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph bySatoshi Shigeno
posted2015/12/09 18:30
トライアウト前日、村上は仙台のチームメートから激励のメッセージをもらい、さらに気持ちを奮い立たせたという。
クラブが求める貢献の形は一つではない。
冒頭で挙げた佐藤も負傷こそしたものの、村上と同じチームでプレーした一人である。佐藤はトライアウトに参加した意義について、こう答えている。
「Jリーグで数百試合にわたって出ている選手のプレー、そしてトライアウトでも引っ張ろうとする姿勢や行動を見ることは自分にとってプラスになりました」
そして空気づくりと同時に、村上はもう一つチームとして求めたものがあった。
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勝敗、である。
「いい雰囲気づくりを短い時間でもできたからこそ、ゲームが引き分けに終わったことに悔いが残ります。プロサッカー選手はチームが勝利してこそ、個人として評価されるんだと思うんですよ」
最終的に30分×2本のゲームは、1-1のドローに終わっている。ふと思い返してみると、過去に取材した中で、スコアの最終結果まで気にした選手は記憶にない。
プロなら、レギュラーをつかみたいと思うのは当然のこと。
一方でクラブ側にとってのトライアウトは、チームに対してどのように貢献できる選手かという振る舞いを総合的に確認できる場でもある。そういった意味で、村上の人間性を買うクラブがあっても何ら不思議ではない。
サッカーの神様は2度目の飛躍を彼に与えるのか。
試合終了後、村上は味方だけでなく、審判とも握手して感謝の念を伝えていた。
「今日に関しては自分を出しきれましたが、もし自分のプレーができてなかったとしても、来ること自体に意味があると思っていました。『次のステージに向けて、みんなで頑張ろう』って言い合って、仲間を増やしていくのもサッカーのいいところですから」
こう笑顔で話した村上だが、彼の2015シーズンはまだ終わっていない。
「チームとして、まだ天皇杯が残っていますからね」
その言葉通り、仙台はベスト8に残っていて、12月26日には柏レイソルと対戦する。もし勝ち上がれば準決勝、決勝と中2日が続くハードな日程となる。今季リーグ戦出場は1試合、それも2分だけのプレーに終わった村上だが、競争心は衰えていない。
「('14年途中に)仙台に2度目の入団をさせてもらったわけですが、まだ何も結果を残せていない。だからこそ、試合に出て勝利に貢献したいと思っています。あと3つ戦って勝てば、大きなものをクラブに残して去っていけますしね」
前述したように、村上は1度目のトライアウトで飛躍のきっかけをつかんだ。ならばキャリアを積み重ねて臨んだ2度目も――。
ポジティブなキャリアを、サッカーの神様は再び与えるだろうか。