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34歳・村上和弘は再び復活するのか。
2度目のJトライアウトで求めた「和」。
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph bySatoshi Shigeno
posted2015/12/09 18:30
トライアウト前日、村上は仙台のチームメートから激励のメッセージをもらい、さらに気持ちを奮い立たせたという。
ベンチで2本目に向けた改善案を話し合う。
先ほど取り上げた資料の中には、もう一つのアピールポイントがあった。
「コミュニケーション」
それが際立ったのは、1本目のプレーが終わった後のこと。公式戦のようにロッカールームに戻るのではなく、お互いのベンチでつかの間の休息を取る。そこで率先してコミュニケーションを取っていたのは村上だった。
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守備でのボールの奪い方、2トップの関係性、中盤でのバランス……最年長での参加となった斉藤大介(35歳)とともに、2本目に向けて少しでもチームを改善しようと努めていた。
60分間だけのチームメートとも信頼を築く。
もちろんピッチに入っても、その姿勢は変わらない。前述した決定機以外にも、サイドを激しくアップダウンしながらも、絶えず声を出していたのが印象的だった。
「(斉藤)大介さん、深谷(友基/33歳)といった経験ある人たちがいて、僕と同じ思いでプレーしてくれたのは大きかったと思います」
こう前置きした上で、自身のトライアウトに対する考え方をこう話す。
「『トライアウト』という言葉を聞くと、どうしてもネガティブなイメージが浮かんでしまいますよね。でもそのイメージを持ってピッチに立ってしまったら、それぞれが本来の力を出しきれない可能性がある。だからこそチーム全体でポジティブさを持って、のびのびとプレーできるようにと心がけていました」
確かに、村上らベテランが入ったチームは、彼らに呼応するように声を出し合っていた。
それぞれが所属するクラブでは、レギュラーや控えという序列はあるにせよ、シーズンを通じて一緒にプレーする。一方、トライアウトで無作為に振り分けられた選手は、言ってしまえば“60分間だけのチームメート”である。そんな限られた時間の中でもチームとしての団結と信頼関係を築こうと、村上は考えていたのだろう。