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今野泰幸の「運」が試されたCS決勝。
何が紙一重の明暗を分けたのか。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byKiichi Matsumoto
posted2015/12/08 10:30
今野泰幸が日本屈指のボランチであることに疑いはない。しかし、今回彼に何かが足りなかったのも事実なのだ。
CS3戦連続となる今野のゴールで先制。
前半27分、コーナーキックから今野がボレーできれいなゴールを決め、先制点を奪ったのだ。
「セットプレーはチャンスだし、どんな形であれ点が取れれば、相手にプレッシャーを掛けられるので、うまく取れたと思う」
これでチャンピオンシップ準決勝の浦和戦、決勝の初戦、第2戦と3試合連続のゴールである。浦和戦のゴールは吉と出たが、決勝の初戦は2失点に絡み、勝利にはつながらなかった。3戦目はどちらに転ぶのか。3試合の勝敗に絡み、ある意味チャンピオンシップのキーマンになった今野の「運」が試されることになった。
だが、ここからガンバは攻勢を強めるどころか、逆にスローダウンしていった。それは今シーズンよく見られたパターンだった。昨年3冠を取った時は、先制点を取った後もたたみ掛けて2点目を奪い、しっかりと守って勝った。追加点を取りに行き、取れていたのだ。
だが今シーズンは、取りにいっても追加点がなかなか奪えない。そうしていつの間にか失点し、焦ってしまう。この試合でも同じ光景が繰り返されつつあった。
「1点取った後、たたみ掛けて(もう1点)取りたかった。思ったよりもプレッシャーがなかったし、チャンスを作れるかなって感じでボールを回していたけど、最後の迫力がなかった。縦パスが入った時の連動や3人目の動きとか、ラストパスの精度が完璧じゃなかった……」
切り札のパトリックは機能せず。
そこでガンバは閉塞状態を打破し、もう1点を取るためにスーパーサブとして温存していたパトリックと倉田秋というカードを切った。だが、パトリックが思ったほど機能せず、点が奪えない。すると、ガンバに傾いていた流れが徐々に広島に変わっていった。そして後半31分、途中出場の浅野拓磨に同点ゴールを奪われたのである。
「これは大きかった。ショックですよ。アウェイゴールで3点喰らっているんで、2点取らないといけなくなってかなり苦しくなったし、慌ててしまった」
今野の言葉通り、ガンバはおよそらしくない慌てぶりを見せてしまった。後半40分過ぎからは地上戦を捨て、パトリックを目掛けたパワープレーに転じたのだ。だが、この日のパトリックはボールを収めることができず、セカンドボールも拾えない。そこに得点の可能性はほとんど感じられなかった。
「パワープレーはうまくいかないですね。地上戦でいきたかった」
今野は、そう言って悔しさを噛み締めた。