錦織から久しぶりに聞いた「自信」の言葉。

 「こういうスコアになったことにショックはあるけれど、（ジョコビッチは）手がつけられなかった」と意外にサバサバしていたのは、錦織らしい攻めるテニスを随所に見せることもできたからかもしれない。それがベルディヒ戦につながった。

　約3年ぶりのベルディヒとの対戦。このところ「ブレークチャンスがありながら」という敗戦が続く中、第5ゲームで2度のブレークポイントを生かせず、第11ゲームのリターンでも15-40からデュースにされた。またしても、か……。ため息が出そうになったところ、ダブルフォルトでこのセット5度目のブレークポイントをもらい、最後はリターンから積極的に攻めてついにブレークに成功した。

「内容も含め、自信になる試合だった」

　錦織から「自信」という言葉を聞くのは久しぶりのような気がする。いい方向に歯車が回り出したかに見えた。しかし、錦織贔屓の目は、フェデラーのインドアでの強さを見誤ったかもしれない。ウィンブルドンでも全米でもジョコビッチに敗れたフェデラーが、今や無敵と思われた王者にストレートセットで勝利した。

準決勝に進むには厳しい条件。

　これで2日前にベルディヒにもストレート勝ちしていたフェデラーが準決勝へいち早く抜け出した。たとえ錦織がストレートでフェデラーを破って2勝1敗で並んだとしても、錦織はベルディヒに対して1セット落としているのでフェデラーが上にいく。ジョコビッチがベルディヒにストレートで勝って2勝1敗になったとしても、フェデラーはジョコビッチとの直接対決に勝っているのでジョコビッチを下回る心配はないからだ。

　そして、残り1枠で錦織が準決勝に勝ち進むためには、錦織がフェデラーに勝ってジョコビッチがベルディヒに負けるというケースしかなくなった。厳しい条件だ。ジョコビッチはベルディヒに20勝2敗で、このところは7連勝している。

　ベルディヒに勝って記者会見をしたときの錦織は、こういう状況になることを当然ながらまだ知らなかった。今はがっくりと肩を落としているだろうか。意外とそうでもないのではないか。会見での2つの言葉が思い出されるのだ。

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