錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
錦織圭、準決進出は困難だが……。
「いつもワクワク」フェデラー戦へ。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byGetty Images
posted2015/11/18 16:20
昨年のソニーオープンでフェデラーを破った時の錦織。そのハイレベルな戦いは、ファイナルの舞台でも激闘必至。
フェデラーへの特別な思い。
まずはフェデラー戦に向けて語った特別な思い。
「彼との対戦はいつもチャレンジだし、ワクワクする。ツアーで一番好きな選手なので。今でも、初めて対戦するような感じがあるかもしれないですね。勝ちにいかないといけないという葛藤はありますけど、どれだけ自分が通用するのかという意味ではいつも楽しみにしています」
今の錦織は、ちょうど1年ぶりとなる目の前のフェデラー戦を、彼に憧れた少年の頃から変わらない気持ちで待っている。勝てば準決勝に上がるチャンスがあるが、結局はジョコビッチ次第……そんなことはどうでもいい。フェデラーという特別なプレーヤーの前に、そのチャレンジ精神はただただ純粋だ。
そしてもう一つが、全米オープン以降を振り返っての言葉。
「大事なポイントで取れないことが多かったので、ずっとモヤモヤ感はありました。今日はそこらへんが払拭できたかと思いますけど、まだ1試合なのでなんともいえない。でもプレー自体はいいので、来年から少し変わってくればと思います」
「今の自分のプレーは必ず支えになる」
ベルディヒ戦で何かがつかめたのだとしたら、この大会で続きをもっと見たいと願うのはファン心理だが、錦織はここをもう来年へのジャンプ台のように位置づけている。「モヤモヤ感」を抱えながらも、格上の選手とばかり少なくとも3試合は戦えるこの大会に期するものは、そうした意味でも大きかった。
そういえば、今季は低迷しながら最近復調の兆しを見せるラファエル・ナダルも、似たようなことを言っていた。
「前向きな気持ちで来年のスタートが切れるかどうかは、この大会に拠るところが大きい。今の自分のプレーは必ず支えになる」
穴に落ちれば這い上がり、どんな輝かしい実績があろうとも〈今〉に挑戦し続ける――。あらためて、ここに集う8人のキャリアを思い、頭が下がる。その一人が錦織であることに、今さらながら胸打たれる。
2日後、フェデラーとの試合が楽しみだ。