マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
ドラフト1位候補の直球と“精緻さ”。
受けて分かった上原健太の「強み」。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/10/20 11:00
早くから広島が1位指名するのではないかといわれている上原健太。抽選はあるだろうか。
ここ1カ月、ドラフトの夢をみるようになった。
「ドラフトが目前に近づいてきて、ここ1カ月ぐらいですかね……夢を見るようになったんです、ドラフトの。それがどれもこれもいい夢で、朝起きた時に、自分自身を安心させてくれるような夢ばっかりなんですよ」
ぶつ切りの短い話を、原稿用につないだわけではない。
実際に、これぐらいのまとまった話をごく自然に続けられる青年である。
すごい! とか、かわいい! とか、やばい! とか。そういう意味を特定しにくい言葉を、おそらくこの長身の青年は使わない。
「ふだんは、そんなに頭では考えていないのに、体はちゃんとわかってるんだな……って思いますね」
明治大・上原健太のストレートのすごさはわかっていた。
昨年の春だ。
先代のエース・山崎福也投手(現オリックス)のピッチングを受けさせていただいた後、たまたま次の番だった上原健太に「ちょっと、いい?」と10球ほど投げてもらった時の、その投げ下ろしの速球の速かったこと、重かったこと。
比べる言い方を叱られることを覚悟で言えば、ドラ1の先輩・山崎福也が全力投球で投げ込んできたボールを、ドラ1候補の後輩は“7”ぐらいの力でさらっと投げてきた。
「踏み込めません。よける感じになって」
なかなか思ったボールが行かないんで……。ちょい沈み加減のモチベーションで始まった今回の“流しのブルペンキャッチャー”。
そうおっしゃいますが、十分すぎるほど来てますよ、ボール。これほどのボールで、いったい何が不満なのよ……。
ベルトのあたりでグラブにボールをセットして、両足広げた仁王立ちでこっちを見つめている。
大きい。
そこから、長いリーチを一気に伸ばしてワインドアップ。うわっ、デカイ!
腕が高い。ブルペンを囲った緑のネット。ボールを持った左手がそこからはみ出る。
時計の文字盤で1時の角度。上体を後ろに反らすようにして、腕を振る空間を作る。おおいかぶさってくる感じ。前の方からものすごく大きなふろしきでもかぶせられる感じ。
「踏み込めません。思わず左の肩が上がってしまって、ボールをよける感じになって……」
六大学でもう何年も対戦してきたあるスラッガーが、そう言って嫌な顔になったことがある。