マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
ドラフト1位候補の直球と“精緻さ”。
受けて分かった上原健太の「強み」。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/10/20 11:00
早くから広島が1位指名するのではないかといわれている上原健太。抽選はあるだろうか。
ミットを外さない直球、鋭いスライダー。
意外と、右打者の外にきまるストレートがいい。シュート回転し過ぎない。ほどよく外へ逃げながら、構えたミットをほぼ外さない。“外”に感覚を持っている。
サウスポーで1メートル90あって真っ向から投げ下ろせば、野球の常識では、コントロールはアバウト。そんな定説をひっくり返せるヤツだ。
だって、変化球があやつれるんだ。
スライダーの動きが小さい。小さくて鋭いからいい。スベリが大きいと、プロの打者には捨てられる。
投げ損じがない。構えたミットにスッと滑っておさまって、構えたミットより高く来ない。ストレートを2つはさんでスライダーに戻る。球種を変えた最初の1球が、また構えたミットに音もなく。
これがいい。球種の切り換え。打者が狙ってくる“スキ”に隙を見せない上原健太。
ミットに当てるのが精一杯のフォークも。
チェンジアップが回転もせず真っすぐに来た。
おおーっ!
曲がるとか、沈むとか、なにかないのか。
すいません、と上原健太が謝っている。
これか、チェンジアップの抜けたやつって? プロの投手の敗戦談話によく出てくる、チェンジアップの投げ損じ。
でもいいんだ、これで、チェンジアップは。タイミングさえ外せば、打者はフルスイングできない。
フォークに驚いた。
上原健太が真っ向から投げ下ろす。腕が背中に回って一瞬あって、そこからボールが真っすぐこっちに来て、タテにすっと落ちた。
最初の1球、ミットに当てるのが精一杯。それでも本人、おもしろくない。
「自分としては、いまひとつなんです。もっと幕が下りるみたいにスッと消えてくれないと」