マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
ドラフト1位候補の直球と“精緻さ”。
受けて分かった上原健太の「強み」。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/10/20 11:00
早くから広島が1位指名するのではないかといわれている上原健太。抽選はあるだろうか。
剛速球よりも、精緻さにこそ特徴がある。
MAX151キロの剛速球を投げ下ろす豪快なピッチングの大型左腕。
多くの報道は、こんな表現で「明治大・上原健太」を伝えている。
スタンドから見る彼は、確かに一見そのような雰囲気もかもしだしているが、その本質は、むしろ豪快というより精緻。多彩な変化球を、構えたミットに80%近いコントロール率できめられる高精度なピッチングが、彼の本当の持ち味と伝えたい。
「(善波)監督さんに気を遣わせている自分がいるのは間違いないと思ってます。僕だけじゃない、高山(俊・外野手)にしても坂本(誠志郎・捕手)にしても、監督はそれぞれの選手の性格やタイプに合った接し方をしてくれている。そのことには自分、ものすごく感謝しているんです」
本をたくさん読んで大きくなった青年ではないか。今になって訊いてみればよかったと悔やんでいる。
自分が見えているから、まわりも見える。いや、まわりが見えているから、自分をもう一人の自分が見つめられるのか。
厳しさと温かさが青年たちのすこやかな成長を引き出しているそんな環境の中で、このピッチャーのこの大きな体が、リリースでピシャッとタイミングが合った時、いったいどんなすごいストレートを投げるのだろう。一人のそんな未完の大器が“船出”の日を待ちながら、腕を撫している。