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3位を“譲られた”阪神がCSに挑む。
和田監督の終幕に「大義」はあるか。
text by
酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph byNaoya Sanuki
posted2015/10/09 12:00
就任して4年目。ペナントレースでは5位→2位→2位(CS制覇)→3位という成績を残した和田監督。
優勝を信じた中村GMに報いるためにも……。
9月29日、告別式で喪主を務めた長男の大輔さんも、あいさつで「父はあまり野球の話をしませんが、今年3月、シーズンが始まる前、野球の話をいっぱいしてくれた。今年は絶対に優勝すると話していました」と明かしていた。
それを聞いて中村GMの言葉をふと思い出した。阪神電車に揺られながら、確かにこう言っていた。
「こんなチャンスはめったにない」
シーズン途中に新外国人ぺレスを獲得したのも、手が届きそうなところにある栄冠をつかむためだった。志半ばだろう。無念だろう。
まだしばらく、中村GMの話を続ける。人一倍、タイガースへの愛にあふれていた。そういえば、こんなことも言っていた。阪神監督時代を回想したときだった。'92年、亀山・新庄フィーバーを演出し、シーズン終盤まで首位に立ちながら惜しくも優勝を逃した。思い出しながら笑うのだ。甲子園で最終戦に臨んだときだ。
「『夢をありがとう』っていう横断幕が張られてな。ファンがいっぱい来てくれていた。あのときは本当にうれしかったよ」
タイガースの周りには、いつも真心込めて応援してくれる人たちがいる。
虎党の大声援に阪神ナインは応えられるか!?
10月8日、秋晴れの甲子園。CS出場を決め、練習前にナインが円陣を作る。輪の中心で和田監督は「143試合を戦ったなかで勝率3位だったということ。勝ち取った権利だし胸を張っていこう。ファンのためにも、頑張ろう」と語りかけたという。そう、ファンのために。ありふれたフレーズを、いま一度、思い起こしたい。
敗北感も、喪失感も、徒労感もあるだろう。そして私情もあるだろう。だが、ここはグラウンドなのだ。選ばれし男しか立てない場所なのだ。思い切り投げ、思い切り打つ。目の前にシンプルに野球の試合があるだけだ。打ちのめされ、ボロボロになった男が立ち上がる姿を見たい。プロとして、勝負師として。阪神ナインの心意気が試される戦いなのである。