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3位を“譲られた”阪神がCSに挑む。
和田監督の終幕に「大義」はあるか。 

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酒井俊作

酒井俊作Shunsaku Sakai

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photograph byNaoya Sanuki

posted2015/10/09 12:00

3位を“譲られた”阪神がCSに挑む。和田監督の終幕に「大義」はあるか。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

就任して4年目。ペナントレースでは5位→2位→2位(CS制覇)→3位という成績を残した和田監督。

周囲の関心は眼前のCSよりも来季の新体制に。

 そんななかでも、早く来年に向けて準備を始めなければいけないという事情もある。成績が下降線をたどるにつれて、球団首脳の動きも慌ただしくなる。坂井信也オーナーと南信男球団社長の緊急会談で、新監督選定の流れが決まっていく。9月26日、広島では南社長と和田監督が直接、話し合った。カープに連敗して優勝が完全消滅すると指揮官は「現状を重く受け止めているし、責任は痛感している。すべての責任は私にあります」と声を絞り出した。

 球団にとって、監督交代は苦渋の決断だ。4年目の和田監督は今季、単年契約で指揮を託され、ノルマはペナント制覇だった。だが、またもシーズン終盤に大失速。球団が掲げていた続投条件は「勝負どころで、勝ち抜けるかどうか」だった。期待に反して例年のように弱り切った姿を露呈して、あっけなく終戦。もう、和田監督に来年のタクトを任せる余地はなかった。

 OBの金本知憲氏に来年の新監督就任を要請する動きが噴出すると、その流れは一気に加速していく。球界関係者は一般論として「新監督になれば体制もガラッと変わる。いまのコーチは現実として『就職活動』しないといけなくなる。そんな状況なのに、グラウンドで一丸になれと言っても難しい」と話す。金本氏は受諾するか。組閣はどうなるか。世間の関心も「新体制」に移る。解散間近の和田阪神は置き去りにされ、宙に浮いた存在だろう。

消失した闘争心はふたたび燃えさかるのか。

 CS出場が決まっても、首脳陣や選手らは複雑な気持ちを抱きつつ、本番に臨むことになりそうだ。和田監督の退任はコーチ陣の去就に直結する。CSに配慮して新監督問題も当面は凍結する流れになりそうで、時間はいたずらに過ぎる。実際に戸惑いを口にするコーチもいた。グラウンドで戦う選手は、そういった気配を敏感に察するものだ。本来、燃えに燃える大一番になるはずなのに、いまのタイガースはどこか静かだ。

 何のために戦うのか。ふと脳裏をよぎるのが、中村GMの存在だ。あの日、突然、この世を去り、盟友だった南球団社長も無念の面持ちで言う。

「ベッドに行ったらな、普通に布団をかぶって寝てるんや。でも、足がちょっと出てて触ったら冷たくなっていた……」

 '12年9月、阪神史上初のゼネラルマネジャーに指名してから、二人三脚でチーム作りに奔走してきた。一緒に試合を見る機会も多く、中村GMは南社長に「今年は大チャンス。優勝を勝ち取ろう」と意気込んでいた。

【次ページ】 優勝を信じた中村GMに報いるためにも……。

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