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3位を“譲られた”阪神がCSに挑む。
和田監督の終幕に「大義」はあるか。

posted2015/10/09 12:00

 
3位を“譲られた”阪神がCSに挑む。和田監督の終幕に「大義」はあるか。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

就任して4年目。ペナントレースでは5位→2位→2位(CS制覇)→3位という成績を残した和田監督。

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酒井俊作

酒井俊作Shunsaku Sakai

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Naoya Sanuki

 久しぶりに頭を抱えた。本稿の担当編集者から「阪神のクライマックスシリーズ(CS)について何か書いてください」と言われたのだ。難題だろう。まるでテーマアップできない。書くべきことが浮かばない。何日も思いめぐらせ、それでも、まだ頭の中で整理できない。V逸、和田監督退任、新監督選定……。あまりにもカオスな状態で、いったい、本当にCSを戦うのか。ここまで書いて、ふと思う。まるでテーマアップできない、か。この空気感こそ、いまのタイガースの立ち位置を表している気がしたのだ。

 ともかく、阪神は悩ましすぎるジレンマを抱えながら、CSに向かうことになった。10月7日の夜、新監督問題の動向を追い、四方八方に散っている阪神担当記者の携帯電話が鳴り響いた。和田監督の3位確定に関するコメントが、球団広報からメール送信された。

「本来は自力でCS進出を決めたかったですが、選手たちとタイガースファンの皆さんが最後の最後まであきらめなかった結果が、CS進出につながったのだと思います。挑戦者として試合をできる喜びをかみしめながら、東京ドームでタイガースファンの皆様とともに戦いたいと思います」

 この日、広島が本拠地マツダスタジアムで中日に勝っていればCS進出を決めていた。予想外の惨敗を喫し、崖っぷちだった阪神にCS出場権が巡ってきた。最後のタクトを振るう指揮官は前を向く。だが、その一方で、空虚にも映る現実が横たわっている。

「燃え尽き症候群」に支配された阪神ベンチ。

 9月下旬の12連戦中だった。ある関係者は首をひねる。

「これだけ負けてもCSがあるのか……。どこをモチベーションに戦えばいいのか……。とても難しいよな」

 とにかく負けた。9月の大ブレーキは、わずかな時間がたったくらいで癒える傷ではなかった。史上まれに見る大混戦のなかで8月上旬から1カ月以上、首位を守ってきた。9月11日の広島戦に敗れて陥落すると、張り詰めた糸が切れたように、奈落の底へ突き落とされた。大勝負の12連戦は下位のDeNA相手に連敗スタート。同23日に中村勝広GMが脳出血で急逝したショックを振り払えず、いたずらに黒星を重ねる。悲願の優勝を逃し、2位すら逃げ、やがてグラウンドから記者の姿が消えていった。

 まさに天国から地獄へ。和田監督の退任が決まったときにはもう、チームは完全に進むべき道を見失っていた。70勝71敗2分けでシーズン終了。借金を背負ってCSに出場するのは史上4球団目だという。最近2週間あまり、阪神ナインは「燃え尽き症候群」にとりつかれていった。優勝を逃したいま、CSを戦う意味はどこにあるのか。心を奮い立たせるのが難しい状況にあるのは間違いない。

【次ページ】 周囲の関心は眼前のCSよりも来季の新体制に。

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