野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
横浜ファンが作ったデスマッチ団体。
FREEDOMSの夢は“聖地”ハマスタ。
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byHidenobu Murase
posted2015/09/06 10:40
“聖地”ハマスタでギリギリのタオルを掲げるFREEDOMSの佐々木貴。戦いも生き様も、そしてベイスターズ愛もただ事ではない。
「俺たちのプロレスができる場所を」
同じ頃、横浜ベイスターズも100敗ペースで負け続けるどん底の中にいた。スポーツ新聞にはフロントの醜聞ネタが溢れ、選手は萎縮したようにやる気をなくし、無抵抗に負けを重ねる……ハマスタのスタンドは、アパッチの会場と同じような黒くて重い空気が支配していた。
腕が縮こまって自分の投球ができない剛速球投手。簡単にファンブルする内野手。覇気なく凡退を繰り返す中心選手。移籍して外から文句ばかり言う元所属選手……。
そんな選手たちの姿を見て、佐々木はどうしようもなく打ちひしがれた。結局、インディーは負け続ける運命なのか。巨人、阪神らメジャーには太刀打ちできないのか。
インディーが笑われるだけの存在であるならば、俺たちは何のために、こんなことをしているのだろう――。
「……もうこんなしがらみの中でプロレスをやるのはやめよう。もっとプロレスを、自由に楽しく、俺たちのプロレスができる場所を作ろう。そんな思いだけでした」
2009年9月。ベイスターズが早々に最下位を決定させたその月に、佐々木貴、葛西純、GENTARO、ジ・ウインガー、神威、マンモス佐々木の6人は、新団体「FREEDOMS」を立ち上げた。
経営のド素人が手探りで始めた新団体。
しかしその船出は、多くの人たちから冷ややかに見られていた。「インディー団体によくある、名前が変わっただけで所属選手も内容も変わらない目先だけのリニューアル」、「事件からの責任逃れのための改名」、「どうせすぐに失敗する」。
しかしそんな論調が占めるのも当然、プロレスのインディー団体とは、星のように生まれては一瞬で消えていくのが当たり前の世界。しかも佐々木は、プロレス以外バイトでケーキ屋さんぐらいしかやったことがない経営のド素人。勝算も何もあるわけがなく、DDTの高木三四郎や大日本のグレート小鹿社長らにアドバイスを受けながら、手探りで団体が生きる道を探していった。
「まぁ……こじつけかもしれませんが、どん底のベイスターズがDeNAに生まれ変わる姿とかぶりましたよね。ベイスターズの選手も三浦番長みたいなカリスマがいれば、昔の梶谷みたいに凄いホームランを打つけど守備でポカするみたいなクセの強い選手が多いでしょ。うちも葛西純(野球興味なし)という圧倒的なカリスマがいる一方で、渋いレスリングができるテクニシャンやルチャリブレ出身選手や大型選手もいる。
タイプも性格もバラバラの5人。そんな奴らを率いる指揮官として僕が理想としているのは、権藤監督と山下監督ですよ。堅苦しいことは言わない。ヘンに相手に合わせず、ミスを恐れず、自分の長所を活かしたスタイルで目一杯好きなようにやって目一杯お客さんを沸かせてこい。それだけがFREEDOMSの方針でした」