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アジアのトップストライカーがJに凱旋!
鄭大世が見せる5年分の苦悩と成長。 

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吉崎エイジーニョ

吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki

PROFILE

photograph byGetty Images

posted2015/07/19 10:50

アジアのトップストライカーがJに凱旋!鄭大世が見せる5年分の苦悩と成長。<Number Web> photograph by Getty Images

韓国でのイベントにて赤ん坊を抱いて登場した鄭大世。プレーの質を決定的に変えるキッカケとなった、自慢の息子だ。

“北朝鮮代表”に向けられた好意と悪意の目。

 周囲は、大きな関心をもって彼を迎えた。2013年のシーズン開幕前、Kリーグ公式サイトは「今シーズン最大のスター」と紹介した。北朝鮮代表としてワールドカップに出場した彼の姿は、韓国であまりにも有名になっていたのだ。Kリーグに渡る前から、代表の南北戦などで韓国メディアともオープンに言葉を交わしており、メディアにも度々登場していた。2013年にオファーを出し、自ら口説きに出たソ・ジョンウォン監督は「まるで芸能人と話すような気分だった」とまで口にしているほどだ。

 一方、苦しい思いも味わった。2013年6月には韓国国内の保守系団体から、北朝鮮代表時の発言が韓国の国家保安法に触れるとして、告訴された。

 韓国籍を持ちながら、北朝鮮代表でのプレーを選択したために起きた出来事だった。当時、「僕はあまり変わらないんだけど、周囲の反応が変わってしまう状況だった」と口にしていた。この時期、クラブからは「むやみにメディアに口を開かないよう」通達を受けていたという。日本のチームが韓国で試合をしていても、マスクにサングラス、帽子という厳重な変装でスタジアムを訪れなくてはならなかった。

韓国文化の排他的な一面に強いショックも。

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 プライベートでは、許しがたい言葉も投げかけられた。

 韓国に戻ってくる知人を迎えに行く際、空港の駐車場で起きた出来事だ。駐車位置を巡って、中年の男性からクレームをつけられた。相手は車のウィンドーから鄭大世が顔を覗かせるや、こう口にした。

「おまえが鄭大世か? よその国に来て、言葉もろくに話せないくせに……」

「よそ」という言葉と、「言葉も話せない」という言葉に、怒りが収まらなかった。車を降り、強く反論した。

「言葉を話せないって何だ? 俺はドイツ語も英語もポルトガル語も日本語も話せるよ。あんたはいったい、何の言葉を話すんだ?」

 すると相手も、年下の鄭大世の態度に腹を立て、激しい口論になった。

 静止に入った警察官に言われた。

「鄭大世さんでしょう? ここは年上の彼に謝りなさい。謝ればいいから」

 在日コリアンとして「韓国のTVなどを見てきたから、文化にも早くアジャストできる」という思いがあったテセだったが、この時は強いショックを受けた。

 実際、2014年の夏ごろまでは、韓国文化への適応の苦しみを度々口にしていた。

【次ページ】 ストライカーを苦しめたゴールの重圧と恐怖。

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