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なでしこ、集大成のワールドカップへ。
澤穂希と大儀見優季、ふたりの思い。
text by
日々野真理Mari Hibino
photograph bySatoru Kaneko
posted2015/06/08 11:00
大儀見優季(左)は3度目の、澤穂希にとっては6度目の出場となるW杯。王者として臨む今大会、どのような戦いを見せるだろうか。
大儀見優季から届いた、1通のメール。
そしてもう一人。
ワールドカップメンバー発表の会見が終わるころ、私の携帯に1通のメールが届いた。
「亜紗乃の名前があって、涙が溢れてきて止まらないよ」
メールの主は、この4年のうちに、絶対的なエースに成長を遂げた大儀見優季。
今大会では、妹の永里亜紗乃が初めて世界大会のメンバーに選ばれたことで、姉妹そろってのワールドカップ出場が叶った。インターネットの速報でその発表を確認した姉は、喜びを抑えきることができなかった。
大儀見自身もドイツへ渡り、苦しんで居場所を切り拓いた。チームメイトから信頼されるまでに流した涙は計り知れない。
同じように海外で挑戦をしてきた妹が乗り越えてきた壁の高さを一番わかっているからこそ、その喜びは想像をはるかに超えたものだった。
「もしかしたら一番苦しんだ4年間だったかもしれない」
大儀見もこの4年間、目覚ましい成長を遂げた陰で、苦難の日々が続いていた。
国内での代表合宿の直前、自主トレのために訪れていた八丈島で、じっくりと話を聞いた。
大儀見は、「もしかしたら一番苦しんだ4年間だったかもしれない」と振り返る。
この4年は、ドイツのポツダム、イングランドのチェルシー、そして再びドイツに戻り強豪のヴォルフスブルクに身を置いた。
新たなチャレンジを繰り返した。そのたびに新しい壁にぶつかり、膝を抱えて悩んだこともあった。そうして苦しんだことこそが、今の自分への自信にもつながっているのだろう。
自分を成長させるため、安堵を求めることは一切なかった。
居心地の良さに安心している時間はない。
「自分の目指す先に向かうためには、時間が足りない。スピードをあげていかないと」
これが彼女の考え方だ。